さいしょのねがい ページ31
(さみしい)
どうしようもなく哀しくなって、立ち止まり蹲ってぎゅうときつく目を閉じる。
ぼやぼやと不鮮明な闇の中で最初に浮かんだ顔は驚くことに愛する弟の顔ではなく、あんなにも嫌悪していた道化師の顔だった。
挑んでくる強者を見れば興奮して、逃げ惑う弱者を見ても興奮する、あの自称奇術師道化師変態男。
スイッチが入れば目の前で注目したくもない部位を元気にしているのを見るたびに、もぎとって微塵切りにしてやろうかと何度本気で考えたことか。(結局その部分に触れる嫌悪感に負けて実行しなかったけれど)
そんな人間の顔が真っ先に浮かんでくるなんて、私も相当に毒されているのだろうか。
なんだか変に気が抜けて、まぶたを開きため息を付けば、頭の中のヒソカは何が面白いのかクツクツと笑った。
…そうだ。私の記憶の中にいるヒソカは、大概笑っているか、何かを企む含み笑いをしているか、戦闘の喜びに歓喜する笑顔を浮かべている。
(……ああ、でも)
ヒソカのあんな顔は、初めて見たかもしれない。
部屋の隅で亡霊か何かのように立ち尽くしていたヒソカの顔を思い出す。
ヒソカのあの顔は、もう見たくない。道化師として(あるいは奇術師としてでも)人を笑わせることを良しとする存在の彼の笑顔が、私のせいで曇ることなど、あってはいけないのに。
認めたくない。理解したくない。
けれど、私は彼と共に過ごす時間の中に、一種の救いに似た何かを見出してしまっている。
それがヒソカのことをかつて観たサーカスの彼と重ねているかなのかは、少女にはわからない。
(ヒソカみたいになれたら)
きっとどんなにか 楽だっただろう
誰にどんな嘘を吐いても厭わずに、人を殺すことさえも遊戯じみた様で愉しむことができたなら。
「……私の…」
でもそんな妄想は所詮イフの話でしかない。
私はいつまで経ってもヒソカみたいに上手く嘘を吐けないし、人を殺すことを愉しいとは思えない。
嘘を吐けば胃酸が粘膜を焼く痛みが強くなるし、人を殺せば吐き気が込み上げてくるだけだ。
私はどう足掻いたってヒソカにはなれない。
壇上で苦しいくらいに輝いていたあの彼のようには、なれやしないのだ。
「最初の願いは なんだっけ……」
それはとても簡単で、ちっぽけな願いだったはずなのに。何故か思い出せそうにない。
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がー(プロフ) - 大好きです!!!更新待ってます！！！！！ (2019年11月11日 22時) (
レス) id: 8eb0f6b23c (このIDを非表示/違反報告)
柴山犬(プロフ) - Kさん» コメントありがとうございます。今回の作品は二人のそこはかとない切なさを表現していきたいと思っていたので、Kさんにその切なさを感じていただけて本当に幸いです。のろのろ更新ですが、どうぞ最後まで見守ってやってください…！ (2019年6月17日 22時) (レス) id: f9baa8e5f4 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 初めまして。切なくて素敵なお話にとても引き込まれました...！応援してます。 (2019年6月14日 10時) (レス) id: 8eeddf36f5 (このIDを非表示/違反報告)
柴山犬(プロフ) - 流-ながれ-さん» コメントありがとうございます！文字数は本当に毎回ヒイヒイ言いながら書いてます……。それでもこればっかりはどうしようもないので、書き手の技量の見せ所なのでしょうね…（遠い目）更新頑張ります！どうかどうか、最後までお付き合い下さいませ…！ (2019年4月9日 1時) (レス) id: f9baa8e5f4 (このIDを非表示/違反報告)
流-ながれ-(プロフ) - 文字数には自分も四苦八苦してますw色々大変ですよね…更新待ってます！ (2019年4月7日 17時) (レス) id: f58151c97d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柴山犬 | 作成日時：2019年3月12日 22時
