最悪の相性 ページ26
成る程、そうか。ボクは今不機嫌なのか。確かにそうかもしれない。だとしたらこの臓腑を舐める様な不快感にも納得がいく。
成る程、ならば質問された通り、何故今ボクは不機嫌なのだろうか。
しかし考えてみても簡単には答えが出そうになかったので、時間を稼ぐ為にもここは一旦彼女に質問を転嫁することにした。
「キミも大概不機嫌そうだけど」
「それはヒソカのせいでしょう」
肩を竦めてみせたヒソカにAは何か言いたげに薄く口を開いたが、諦めたように頭を振った。
ため息を吐いたAは
特に何もすることがなくなったヒソカは天井を見上げてから、いつの間にか消えてしまっていた笑顔の仮面を貼り付けるように薄っぺらに口角を上げた。
「ナイフをくれたのはキミの上司かい？」
「そうだけど、それがどうかしたの」
いつものように道化めいた口調で首を傾げてみせてもAは冷めた声でこちらを振り返る様子さえ見せない。
他人を排他することで柔い己の心を隠そうとするAの賢い自衛方法と、その心に甘露と毒と嘘を吐き入り込むことで破壊することを楽しむ己の性はどうやら最悪の相性らしい、と今になって気づく。今さらどうあがいても白々しいし、本性が透けて見えるということか。
だとすれば、どうしたものか────とヒソカが思考の深みに入った瞬間、不穏な気配を察したらしい少女が振り返った。
ヒソカを見上げる、夜空を模したAの瞳。それは彼が少女をひと目見たときから気に入った一等好きな部位であるにも関わらず、その瞳が宿したこちらを探る様な光が今は何故か酷く気に入らなかった。
成る程。ボクはAの言動に不機嫌になっているらしい。と理解したところで、今までに経験したことのない不快感と苛立ちが臓腑を焼いた。
そしてその熱は、ヒソカがこの場で───というか彼が金輪際少女へ伝えるつもりのなかった台詞を、口枷を解いて放たせた。
「キミは、人を殺すのに向いてないよ」
.
───しまった、と思ったときにはもう遅かった。体感温度が一気に5度くらい下がったような気さえもした。
「この男は突然何を言い出すのだ」と言いたげなAの視線が、先刻までの怒りが驚きで消し飛んだ瞳が、闇の中で不思議そうにぱちぱちと瞬く。
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がー(プロフ) - 大好きです!!!更新待ってます！！！！！ (2019年11月11日 22時) (
レス) id: 8eb0f6b23c (このIDを非表示/違反報告)
柴山犬(プロフ) - Kさん» コメントありがとうございます。今回の作品は二人のそこはかとない切なさを表現していきたいと思っていたので、Kさんにその切なさを感じていただけて本当に幸いです。のろのろ更新ですが、どうぞ最後まで見守ってやってください…！ (2019年6月17日 22時) (レス) id: f9baa8e5f4 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 初めまして。切なくて素敵なお話にとても引き込まれました...！応援してます。 (2019年6月14日 10時) (レス) id: 8eeddf36f5 (このIDを非表示/違反報告)
柴山犬(プロフ) - 流-ながれ-さん» コメントありがとうございます！文字数は本当に毎回ヒイヒイ言いながら書いてます……。それでもこればっかりはどうしようもないので、書き手の技量の見せ所なのでしょうね…（遠い目）更新頑張ります！どうかどうか、最後までお付き合い下さいませ…！ (2019年4月9日 1時) (レス) id: f9baa8e5f4 (このIDを非表示/違反報告)
流-ながれ-(プロフ) - 文字数には自分も四苦八苦してますw色々大変ですよね…更新待ってます！ (2019年4月7日 17時) (レス) id: f58151c97d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柴山犬 | 作成日時：2019年3月12日 22時
