エースのガールフレンドだと思っていたら本当はそうじゃなかった子の話 (ページ10)

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＃１０ページ10

エースside

「A、なんであそこにいたんだ？」
彼は呟く。

彼が見たのは確実にここにいるはずのない愛しの彼女。
先天的な性別が女なので彼女はNRCには来れないはず。
誰かに会いに来たのか、そんな簡単にNRCに入ることなどできないはず。

まさか、

ある可能性に気づいた彼は自室へと走り出した。

ドアを勢いよく開ける。
ものすごい音がしたが、彼はそんな事を気にもとめずにまっすぐ目的の場所に進む。
「(ごめん、A)」
そう心で謝って彼もとい彼女のクローゼットを開ける。
彼氏だし、いいよなと誰に伝えるわけでもない言い訳をしながら。
そこにあったのは、男性用の服

エースは目を細める。

そしてその服をめくった。

「(やっぱり)」
男性用の服はカモフラージュで、しっかり女性用のモノが入っていた。
そうすると誰のもとに行ったのかは明白である。

理由は分からないが。

注意深く彼女のクローゼットを閉めてオンボロ寮に行こうとする。
自室から出ようとした瞬間、ズボンのポケットが振動した。

『本日オンボロ寮は立入禁止』

まるで計ったかのようにユウから連絡が来る。
チッと舌打ちをした。
無性に苛つく。

何があったのかは分からないし、どうして素性を隠してここに通っているのかも分からない。
素性を隠しているから直で相談できないとしても、辛くなった時に電話やメッセージを使ってエースに相談してくれてもいいではないか。

だが彼女はユウを選んだ。
「くそ…」
それが無性に悔しくて、低い声が出た。
壁を殴る。

ヒリヒリと痛んだ拳が少しだけ気持ちを冷静にさせた。

――帰ってきたら絶対に問い詰めてやる。