【文スト】 太宰の元カノはアホ過ぎる 【太宰治】

元カノは後輩に優しくない。 ページ15

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太宰は路地裏を目指した。



「ああ！靴紐解けた！先行ってて！」


「云われなくても行くよ！」



不意にAの靴紐が解けた、しかも両方。


3cmのヒールが付くパンプスを履いていたAだったが足が痛い、となり中原家からパクってきた。

今頃、中原家にはパンプスがあるだろう。



「くっつひもがぁ、解けちゃったなぁ、ほーどけちゃったなぁ」

『靴紐が解けた』と云う歌を歌いながら路上にしゃがみ靴紐を結ぶA。



通行人たちは、また此奴か、と何もせずに横を通り過ぎる。

通行人の対応力が凄い。



「うっしゃ、結べたでい！行こう、か…あ〜？」



Aは失敗してしまった。



「太宰、何処行ったん」



太宰が行った路地裏を知らない。


阿呆だ。靴紐を結ぶのと『靴紐が解けた』の歌を歌うのに集中し過ぎて元カレの背中すらも見ていなかった。

阿呆だ、世界一の阿保だ。



「まあ、気配で判るっしょ」



Aは或る意味天才だ、その驚異的な阿保と驚異的なポテンシャルで幾度の難関を潜り抜けてきた。


今もだ。



「だ、だ、だ、だっざいぃ〜が、ど、ど、ど、どっこかわっからなぃい…、血の匂い」

『太宰が何処か判らない』と云う歌を歌っていると何処からか血の匂いがした。



昔、よく嗅いでたから感覚で判るらしい。



「！？…っおい！人が倒れてんぞ！」



血の匂いがする路地裏にセーラー服の女子とオレンジ髪の男子が血を流して倒れている。



「あ、太宰見っけ！」



Aは倒れてる男女に自身(中原)の上着で少しだけ止血し誰かと話している太宰に近寄る。



「遅いよ、水原」


「み、水原…？！」

太宰と喋る主がAの苗字を聞きたじろいた。


「ん？その声は…、芥川ぁ！久し振りだねぇ！いつ振り？あ〜、待って思い出すわ。確か、芥川の異能で紙は何枚切れるのかやった時以来だね！」


「水原…さん、如何してまだ生きて…」



芥川、もとい芥川龍之介はAの事を苦手分野、否、嫌い分野に入れていた。


異能で何枚紙が切れるか試してみよう、とAが云った時、

異能でパッパと紙を切っていく内に大切な書類があることにAは気付かずに芥川と八つ裂きにしていた。


それはそれは大変怒られた(太宰に)。


あの時の太宰さんは首領よりも怖かった、三日三晩寝れないほど、と芥川は思い出すだけで足が竦(すく)む。



「思い出すだけで笑えるわ〜！」



笑えない。




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