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10話 ページ10

ガチャ




ドアを開けると、師匠と己己己己さんが待機していた。




「お、546…ナギサ。いつも通り早いな。」




そう言う師匠の目には少し涙がたまっていた。




師匠がアンドロイドが一人いなくなったごときで泣くはずがない。




それを知っている私からすると、師匠が泣いているのはとても気持ちが悪かった。




「いやぁ、楽しみにしてましたよ。ついに、僕の物になるんすねぇ。」




僕の、物。




この人からしたらアンドロイドはただの物でしかない。
この人のアンドロイドになったら自由も全て奪われるのだろうか。




自由が奪われたとしても、私にやることなんて無いので意味はないが。




「師匠。」




「なんだ?」




「お世話に、なりました。」




私のその言葉を聞くと、師匠は一瞬目を見開いたが、すぐに優しく微笑んだ。




「お前も、立派になったな。……幸せになれよ。」




この人間は本当に私をただの物だと思っていたのだろうか。




もし、私を愛してくれていたとしたら?
皆と違い、ちょっとでも優秀な私を、愛してくれていたとしたら?




そんな期待をしたとしても、返って来ないと分かっているのに。




「さようなら。」




私は笑顔でさよならを告げた。




その後は、己己己己さんと己己己己さんのアンドロイドに連れられて、車へ乗り込んだ。



















師匠視点




ずっと、5歳のころから施設にいたナギサ。




そんなナギサに、少しだけ愛着がわいていたのかもしれない。




少なくとも、あちら側はそう思ってなさそうだが。




俺はただ、ずっとアンドロイドを厳しく指導するしかできない。




上の命令に逆らうと、始末されてしまうから。




さよなら、ナギサ。




外へ出た先が綺麗な社会だろうが、汚い社会だろうが、上手くやれよ。




お前の幸せを、誰よりも願ってる。

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作者名:十六夜家。 | 作成日時:2024年3月17日 20時

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