9話 ページ9
ガチャ
いつもはあちら側から開くはずのない扉が開く。
「54679番!何があった!」
息をきらしたようすで師匠がやって来た。
何故そんなに急いでいるのだろうか。
何か異変があったのか。
「え、どうしたんですか。」
「どうしたもこうしたもあるか!己己己己さんがいなくなって…!」
私が聞き返すと、師匠は一大事だと言うように答えた。
そうか。この人間は気絶していて何も様子がわならなかったのか。
「あの人なら帰りましたよ。気に入ったので1ヶ月後すぐに家に着いてもらうと言っていました。」
そう言うと、師匠はほっとした顔をした。
「そうか。俺はあの人の機嫌を損ねてしまったて心配で心配で…。気に入られてもらったようで良かった。お前はアンドロイドの中でトップレベルで優秀だからな。」
優秀。良いように言っただけで、どうせ指示をよく聞き扱いやすい、壊れにくいという意味のくせに、よく言ったものだ。
「そうですか。ありがとうございます。」
「ああ。じゃ、残りの1ヶ月、楽しめよ。」
そう言って師匠は帰っていった。
この何も無い施設の中でどう楽しめって言うんだ。
アンドロイドもたくさんいるわけじゃないし、いたとしても話すわけではない。
私がこの施設から出ていったとしても、誰も悲しむ人なんていないんだろうな。
師匠は、ただお荷物が一人いなくなったと思うだけだろうし。
こうして何事もなく、1ヶ月がたった。
「おい、54679番。訓練場所に来い。」
あのときと同じように、放送が鳴る。
この施設とも今日でさよならだ。
最後に怒られたいしないように、急いで訓練場所に向かった。
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作者名:十六夜家。 | 作成日時:2024年3月17日 20時