8話 ページ8
「それじゃ、またね♪」
己己己己さんは終始笑顔で帰っていった。
さて、これからどうしようか。
施設には何も無いし、特にやりたいことなんて何も無い。
いつも部屋でありを見つめて時間を潰しているのでアンドロイド内での友達はいない。
何もやることがないので、部屋に戻ってすぐに眠りに着いた。
また、あの夢を見るのだろうか。
何も見えない、暗闇の部屋の中から、泣きじゃくる少女の声が聞こえた。
「おかあさん、おかあさん…、どこにいるの?早くむかえにきてよ、…。」
くらい。さむい。こわい。
おかあさんがいれば、こんなきもちなんてへっちゃらなのに。
どこにいっちゃったんだろう。
たすけて。
「誰か、いるの、?」
後ろの方から声が聞こえた。
「あなた、だあれ、?」
わたしとはんたいで、あかいかみのけのおんなのこ。
すごくながくのばしていて、とってもきれい。
「私は、…。私に名前はない。」
少し儚げで、寂しそうに目を伏せながら少女は言った。
「そっか…。」
「君の名前は、?」
わたしの、なまえ。
わたしのなまえ、?
わたしはなんてよばれてた?
わたしのなまえはなに?
おかあさんになんてよばれてた?
わからない。
わたしのなまえはあるのに。
そこに在るのに。
くるしい。くるしい。
「わたしは、わたしは、…」
目が覚めると、そこはいつもの刑務所のようなどす黒い天井が見えた。
いつも通り7時にかけていたアラームが静かな部屋に鳴り響く。
女の子が名前を聞かれて、名前を思い出せない夢。
あの女の子の続きなのだろうか。
それとも、何も関係ないのだろうか。
共通するのは、「親がいない」ということ。
そういえば、私の親もいないのか。
造った人間を親とするのならば話は別だが。
私にも、「親がいない」ということは共通している。
、、…
馬鹿だな。ただ共通しているだけだ。
今はそう信じるしかなかった。
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作者名:十六夜家。 | 作成日時:2024年3月17日 20時