6話 ページ6
ジリリリリリリ。
唐突に音が流れ出して驚いたが、自分がかけたアラームだと気づく。
10時に訓練場所に待ち合わせだと言われているため、急いで部屋を出る。
一応アラームをかけたのは9時55分程だったのだが、この施設は驚く程何も無いので迷子になりかけるからだ。
自分の部屋から出ても、特に誰かがいるわけではない。
大体アンドロイドは決まった時間に起き、部屋にこもっているからだ。
アンドロイドに排泄物はないし、お風呂に入るわけでもないし、肝心の食事は部屋に自動で送り込まれる。
アンドロイドに食事が必要なわけではないが、とっていたほうが性能が少しだけ伸びるらしい。
部屋の外に誰かがいる場合は、大体人間か出荷されるアンドロイドだろう。
私は師匠に気に入られてほぼ毎日訓練場所に向かっているため、施設の人間や出荷されるアンドロイドとはよく会っている方だと思う。
次は、私の番か。
別に出荷されていく同族達を見下していたわけではないけれど、自分の番だとなるとちょっと複雑な感情にもなる。
誰もいない廊下を通りながら、訓練場所にたどり着いた。
カチャ
ノックを繰り返そうとしたら、あちら側からドアがあいて少し驚く。
鮮やかな黒髪に混じった緑色の毛先。
少し色っぽく怪しげな笑顔。
私は後ろで見てきたから知っている。
この人を、誰よりも。
「お久しぶりです。己己己己さん。」
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作者名:十六夜家。 | 作成日時:2024年3月17日 20時