12話 ページ12
トイレから出ると、すぐに己己己己さんが待っていた。
「さぁ、行こうか。」
己己己己さんからはタバコの匂いがした。
トイレに行くと言ってタバコでも吸っていたのだろう。
タバコ。
師匠からもらって吸ってみたことはあるが、何のために人間がこんなものを吸っているか分からなかった。
別に美味しいわけじゃない、幸せな気分になるわけでもない。
自分の生きる時間が削られていくだけなのに、何故一部の人間は吸っているのだろうか。
そう思いながらまた車に乗り込んだ。
それからどれだけがたっただろうか。
「着いたよ。」
己己己己さんがそう言ってドアを開けてくれた。
そこには、まがまがしい雰囲気をまとっている洋館のような建物がたっていた。
「ここが、僕の家だよ。」
このぐらいの家を持っているなんて、己己己己さんはどれだけお金もちなのだろうか。
ほぼ毎日アンドロイドを買っていたのでお金もちだということは知っていたが、まさかここまでとは。
親の譲り受けだろうか。
「すごい豪邸ですね。」
思ったことをそのまま口に出すと、己己己己さんはそうでしょそうでしょと言うように満足気ににっこり笑った。
「この家、僕が一から建てたんだよ。」
建てたお金はどこから、ということは聞かないでおいた。
「あ、そういえばだけど…」
己己己己さんが片手ですばやくセキュリティを解除しながら言う。
「逃げ出す、なんてことは考えないでよね?」
今まで見たこと無いような恐い顔をしていた。
私が逃げ出したいなんて思うことはないだろう。
どっちにしろ、あのときの施設と変わらない。何もすることがなくて、日常に飽きる。
どこへ行ったって、大体そんなものだ。
闇金、スパイ、犯罪者、etc…。私が関わるのは大体そんなものだ。
人間の汚さなんて見飽きた。
「分かりました。」
それを聞くと己己己己さんは安心したような顔をした。それに一つ付け加える。
「己己己己さんこそ、私を裏切るような行為をしないでくださいね?」
これで良いんでしょう?
普通の言葉ではなく、貴方はこれを喜ぶ。
思った通りに己己己己さんは歪んだ笑顔を見せた。
「やっぱり君は最高のアンドロイド、いや、女だよ。」
そうして私達は笑い合った。
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作者名:十六夜家。 | 作成日時:2024年3月17日 20時