■ 矛盾と違和感ばかりの小噺集
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故にきみもひとりであった - 2024年5月4日
「う〜つまらないんだぜ〜……?」
雨の降る日は滑走路を消していく。
ぼんやりとグラウンドに引かれた白線が消えていくのを見ていれば、背後でふふっと笑い声。
「姉ちゃん!」
「光くんが遅いから二兎先輩が心配してたよ」
「あ!今日は練習の日だった!」
がたがたと椅子から立ち上がれば姉ちゃんは落ち着いてと言い、頭を優しく撫でてくれた。今日もすてきな紅茶の匂いがする。今日は紅茶部があったのかな、なんの紅茶だろう。爽やかで少し甘味を含んだような匂いが制服のブレザーから漂い鼻腔をくすぐるたびにぼんやりと思う。
姉ちゃんは「いつも一番乗りなのにどうしたの?」と、不思議そうに聞く。
「今日は雨だから走れなくて悲しいんだぜ〜?」
「あはは、そっかぁ、光くんは走るの好きだもんね」
けど、陸上部だから内周で階段ダッシュやらがあるのではないかと問かける姉ちゃんに違うんだと首を振った。
「グラウンドみたいにぱあって開けてて、走ってると風がびゅんびゅん吹いてそれがばあってくるのが気持ちいいんだぜ!」
そうなのだ。あの疾走感、開放感。全てが好きなのだ。走っていると新しい世界が切り開いていくようで、とてもきらきらしているのだ。
その想いを両手を使い表そうと奮闘すれば姉ちゃんはまたふふっと笑う。
「はやく雨が止むといいね」その言葉に力強く頷いた。
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作者名:塩町 | 作成日時:2016年11月20日 23時