TVXQ　奏心な愛　1　～ユチョン～

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Aさんの診断結果

第20話：Ｂｅｇｉｎさん
もうすぐ閉店の時間。
「オーナー、閉店の準備始めていいですか？」
「あ、ああ…。」
オーナーは誰か待っているようだった。

「誰かお客様が来られるのですか？」
「いや、別に…。」
「？？」

そんなときドアが開きBeginさんがやって来た。
彼の名前を知らない私は勝手に“Beginさん”と名前を付けていた。

今日は1人ではなく、ギターを担いだ人と一緒だ。
「こんばんはー。また来ちゃいました。」
Beginさんは帽子とサングラスを外して、オーナーに丁寧にお辞儀をした。

「ああ、いらっしゃい。」
「今日は連れもいます。」
彼がそう言うと、一緒に来た男の人も丁寧にお辞儀をした。

「ギターのメンテナンスをしてほしいそうです…いいっすか？」
「ああ。どれ見せてごらん。」
なんだかオーナーは嬉しそうで、私はそんなオーナーの姿を見るのは初めてだった。

「コーヒー淹れてきますね。」
私は奥のキッチンに向かった。そして、お湯を沸かした。

普通はコーヒーメーカーで淹れる方がポピュラーだが、私はペーパードリップで淹れる。
何回かに分けて少量ずつお湯を注ぎ入れる、ゆっくりとしたこの時間が好きだ。
シュンから教えてもらった…小さな幸せな時間。

シュンとのことを思い出していたらなんだか胸が痛くなりうつむいた。

「僕、手伝いますよ。」
振りかえるとBeginさんが立っていた。
「あっ、大丈夫です。Beginさんはあちらで…」
私は慌てた。本人に向かってBeginさんって…(汗)

「Beginさん…？あっ、僕のことですか？」
「えっ、ご、ごめんなさい…。お名前知らなくって。」
「そうだった！自己紹介するのを忘れてた(笑)。僕、ユチョンです。」
「ユチョン…さん？」
分かってはいたが、やはり日本人ではなかった。そんな私に気付いて彼は続けて言った。
「僕、韓国人です。」
「あぁ、そうなんですか。日本語お上手ですね。日本にはお仕事か何かで？」
私の発言に彼は少し驚いていた。
「…僕のこと知らないっすか？」

ユチョンさんって有名人なの？頭をフル回転させて韓国人の音楽家を思いだしてみたが…ダメだった。
「ごめんなさい。」
私は素直に謝った。

するとユチョンさんは少しホッとした表情をした。
「別に気にしないで下さい。知らない方が変な先入観がなくていいっすから。」
そう言って微笑んだユチョンさんの顔は人懐っこい子犬のようだった。