16話 : 満足気 ページ16
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「首の…?」
とAは自身の首に触れる。
痒みはない。
しかし、そこには噛まれたのか凹みがある。
そして思い出す。
記憶を失う直前、宿儺になにをされたのか。
思い出して、顔に熱が集まるのを再度感じる。
「…例の呪詛師?」
「これは、宿儺…、」
「なんでそこで宿儺が出てくるの?」
という食い気味の五条の言葉に、
あっ、と声が漏れてしまう。
先程の解剖室での説明では、宿儺について触れていなかった。
故意に隠そうとしていたわけではないが、
結果、隠していたことになってしまい、
気まずい雰囲気が流れる。
「実は…、
宿儺が生得領域の外に出る前に、少し会話をして」
「どんな?」
そう聞かれて、困るA。
あの時、宿儺は結局【思い出せ】と、
そう伝えに来ただけ。
A自身も、
あの会話にどんな意味があったのか理解していない。
だから、
「特に中身のある会話はしませんでした」
と今度は故意に隠す。
あの時の会話も、宿儺にされたすべてを。
五条悟は、特級術師。
常に忙しく全国を、時に海外まで飛び回っている。
そんな五条は、今回の件でも
上層部にどう責任を取らせるか考え、動き、
生徒のために奔走するだろう。
これ以上、五条の負担をかけたくない、というAの思いやりだ。
そう、思いやり…、のはずだ…
「ふーん、それで?」
「急に、首元に噛みつかれてしまい、
そのまま呪力を流され、気絶してしまいました」
と眉を下げる。
あの時、宿儺がどんな意図をもって、
あんな行動をしたのか、わからないが、
不覚をとられて、気絶させられてしまったのは事実。
そして、その結果、
虎杖が自死、伏黒も瀕死に近いけがを負わせてしまった。
あの時の現場の責任者はAだ。
どんな想定外なことが起きたとしても、
その全てにAは責任を負わなければいけない。
Aは今度こそ、五条に怒られる覚悟をする。
しかし、五条は口を開こうとしない。
ただ、じーっとAの首元を見つめるだけだ。
「悟?」
「…むかつくなぁ」
と一言放ったと思った瞬間、
Aの首元に噛みつく五条。
「痛っ…」
とAが声を漏らすと、五条は離れる。
そして、Aの首元に
先ほどよりくっきり残っている赤い花をみて
満足気に微笑んだ。
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ミルクティー - 「ゆっこ」さんと同じです。めちゃくちゃ面白いです。結末が気になるな〜 (4月2日 20時) (レス) @page16 id: 12753137d6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっこ(プロフ) - とても好きです。更新楽しみにいています! (3月29日 20時) (レス) @page12 id: 2eecfc8ab4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ルーシェ | 作成日時:2024年3月11日 21時