12話 : 初めての ページ12
.
数秒、いや、数分はたっただろうか
吐息が水音に変わり、空間に響き続ける。
時々漏れる吐息は、宿儺をさらに奥へ奥へと誘う。
口内のものが、
どちらのものなのかわからないくらいになった頃
宿儺は満足したのか、
だが、名残惜しそうにAの唇を離す。
「ケヒッ」
宿儺は満足げに笑う。
その姿は余裕そのものだ。
Aはというと、初めての経験に、
息が上がり、目がとろんとし、
支えられている宿儺の腕がなければ、
座り込んでしまうほど力が抜けている。
「良いぞ、初々」
「一体、何を…」
と顔を見上げると、
宿儺はどこかさみし気な顔をしていた。
その宿儺の表情がいつかの記憶と重なる。
「うっ」
頭を押さえる。
宿儺はその様子を見て、
「早く思い出せ
俺は1000年、お前がまた俺の前に現れるのを待ったというのに…
これ以上俺を待たせるというのか?」
と問いかける。
その目は真剣そのもの。
「…私は、
私には、あなたと過ごした記憶はありません」
Aは言い切る。
その言葉を聞いた宿儺の瞳には、
苛立ちと哀しみが。
「A、貴様…」
「ですが…、」
とAは、宿儺の言葉を遮り、続ける。
「ですが…、
あなたに触れられると、どこか…、
どこか、懐かしいんです。
私はあなたのことを知らない…、
でも、知っている気がするんです…、
これは…、」
と紡ごうとした言葉は、紡げなかった。
また、宿儺が唇を塞いだからだ。
しかし、先程と同じ強引さの中に少しだけの優しさを込めて。
「早く、思い出せ」
とAの首元に顔を寄せ、
小さく噛みつく。
「痛っ…、」
と呟くAに、
呪力を流し、気絶させる。
宿儺は、そのままAを優しく床に寝かせると、
立ち上がり、外を向く。
そして、
「さて、外にいる小僧で遊んでやるか…」
と楽しそうに呟いた。
.
244人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミルクティー - 「ゆっこ」さんと同じです。めちゃくちゃ面白いです。結末が気になるな〜 (4月2日 20時) (レス) @page16 id: 12753137d6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっこ(プロフ) - とても好きです。更新楽しみにいています! (3月29日 20時) (レス) @page12 id: 2eecfc8ab4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ルーシェ | 作成日時:2024年3月11日 21時