･ ページ31
．
まあ、いいか。
今更決まってしまったことを覆す気にもならないし、彼らが行くというのならば自分に従う以外の選択肢はない。
根底にある考え方はそう簡単には変わらなかった。
面倒くさいという気持ちを隠そうともしない彼らを一瞥して、夜蛾は続けた。
「その前に、お前らには職場体験に行ってもらう」
「…」
「返事は？」
「やだ」
「…わかったな」
ゲェ、と漏らした五条を無視して夜蛾は彼らにとある紙を渡した。
体育祭で彼らの姿を見てぜひ自分の事務所に、と声をかけたヒーロー事務所の名前が並んでいる。それらを流し見して、五条はその紙をぐしゃぐしゃに丸めた。
「俺、行くなら先生のとこがいいんだけど」
「…私も、弱者の下に付く気にはなれません」
五条のクソみたいな発言に夏油は同意した。
夜蛾は強い。
最強であるのは間違いなく五条だが、そんな五条でも結局夜蛾には叶わない。夜蛾は彼らの恩師だ。文句を言いながらも彼らは夜蛾の言う通りに動く。
教師はいつまでも教師で、その生徒はいつまでも生徒だ。
それは五条と虎杖らにも言える。教師としての役割を放棄した五条だが、やはり彼らは五条に従うだろう。
夜蛾もこの発言は予想出来たようだった。
「あぁ、元からそのつもりで乙骨たちには話をつけてある。いいか、ここでは彼らの方が先輩だ。何が言いたいか、わかるな？」
「わーってるよ、身体を労わってやればいいんだろ？」
五条の頭に拳骨が降った。
「アホだろ、あいつら」
「今更じゃない？」
拳骨を食らった五条は自分だけが痛い思いをするのがおそらく許せなかったのだろう。沸点の低い夏油をおちょくり、結果、夏油にも拳骨が落とされる羽目になった。
彼らは今も、夜蛾に捕まっている。
生徒指導室から寮までの道のりは長い。
八雲と家入も目を引く容姿をしているし、何より噂がまだ完全に消えた訳では無い。すれ違う生徒達は好奇な目で彼女たちを見ていた。
うざいな、なんて二人して思っていれば突如明るい声が響く。
「家入さん、八雲さん！こんにちは！」
「灰原じゃん、やっほ」
「こんにちは、七海も」
「どうも」
七海はちらりと後ろを見て安堵した。今日はあの問題児達は居ないらしかった。
別に家入と八雲が共に行動することは珍しいことでは無いが、やはり面倒くさい二人を探してしまうのは何度も彼らに悩まされた経験によるものだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4079人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
く - また戻って来ちゃいました…！！本当にいつ読んでも面白くて飽きません！！この小説が大好きです！！ (3月26日 11時) (
レス) id: 2886bd5eaa (このIDを非表示/違反報告)
a - 何回も読み返してしまうほど設定がしっかりしていて解釈の仕方が納得できたりしてしまう程大好きな作品です更新待ってます (3月22日 5時) (レス) @page41 id: 125b1c80a3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - え、おわり？？？え？？ここで？？？え (3月14日 0時) (レス) @page41 id: a785fb42c2 (このIDを非表示/違反報告)
甚嘉 - このお話とても大好きです！私はさしす組推しなんですが、夢小説ではよく硝子さんだけ距離を感じるものが多くて…だけど、この作品は4人の友情が綺麗に描かれていてとても惹き込まれました。これからも頑張ってください！ (2月16日 21時) (レス) @page41 id: c9696c8440 (このIDを非表示/違反報告)
r(プロフ) - この作品大好きで大好きで…初期の頃からずっと追いかけてました…久しぶりに見たら更新されてるなんて…夢中で読みまくりました、、更新ずっと待ってます…作者さんの書く作品が大好きです (1月13日 18時) (レス) id: 892520834f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ずんだもち | 作成日時：2021年6月11日 21時
