木枯らしが枯らす木7 ページ7
外は思いの外、暖かかった。
「うーん、手袋はいらなかったかなあ」
「いらなかっただろう。俺が今日マフラーしてないのわかってなかったのか」
「そういえば、そうだねえ」
眼鏡の首元にあの若葉色はなかった。マフラーが必要ない程度には暖かいということだったのだろう。
ショッピングモールで、ブランケットを探していた。老人の男二人、どういう関係なのか、怪訝な目で見られている気がするが、あまり気にしない方がいいのかもしれない。
この年で友達とショッピング、というのもなかなか奇妙なもので、顎髭でさえ、声を大にして言うのを躊躇った。誰のためかというと、眼鏡のための買い物なので、そこは弁えておこうと思ったのだ。
二人で歩いて迷走し、結局店員に聞いてようやく辿り着いたブランケットのコーナー。すぐ側にはクッションのコーナーもある。
「ソファ用のクッションとかもありだよね。こういうキャラクターもの買ってさ、お孫さん喜ぶんじゃない?」
「はあ……好みは知らんが、喜ぶのか?」
「喜ぶさ!!『おじいさまからのはじめてのプレゼント』だよ?」
「おじいさまはやめてくれ……」
からかっているのがすぐにバレた。ただ、眼鏡にとって「おじいさま」という呼称はそこそこに恥ずかしいものらしい。あの鉄面皮が赤面している。酔っても顔に出ないというのに!!
古今東西、孫という存在はじいさんばあさんを甘やかし機に変える恐るべき兵器なのかもしれない。キャラクタークッションを選び始めた眼鏡を見て、顎髭はしみじみとそう思った。
「ブランケットはどうするの?」
「そうだな……あいつには無地のものを贈ろうと思う。倅の嫁にも色の違うやつを」
「嫁さんは若いんだから、チェック柄とか、もっと洒落っ気のあるやつにしたら?」
顎髭の指摘に、眼鏡はいや、と頭を振る。
「それであそこに軋轢が起こるのは避けたい」
「ふぅん?」
「それに、洒落っ気のあるものは倅が贈るのがいいだろう」
「はは、気遣いしいだね」
そういうところ、嫌いじゃないよ、と顎髭は笑った。
からからと笑う脇で、眼鏡は真剣な眼差しで色選びをする。やがて、手に取ったのは濃い緑色のものと、朱色のもの。
「こっちがあいつで、こっちは倅の嫁」
悪くないセンスだ。妻の好みは眼鏡の方が知っているだろうし、お嫁さんの好みは贈ってきたマフラーから伺える。おそらく、明るくてフレッシュな色が好きなのだろう。
「いいんじゃない?」
「そうか」
そのときだった。
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作者名:九JACK | 作成日時:2021年2月27日 3時