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木枯らしが枯らす木5 ページ5

ブランケット、要するに膝掛けだ。この時期なら温かそうなやものが出回っているだろう。サイズも気にしなくていいし、あまり生活の邪魔にならない。
「女の子は足とか冷えやすいって聞くし、お腹を冷やすのもよくないからね。ブランケットなら畳めば収納も楽チン。うたた寝しちゃった子どもにかけるのもいいし、使い道がわりとあるからいいと思うんだけど」
実用的というのが眼鏡の中ではヒットだった。実用性を重視するのが元妻である。
「いいな、ブランケット」
「今は節だし、元々そんなにお高くないから、価格的にも気を遣わせなくていいんじゃない?」
「そうだな。今度買いに行くか」
眼鏡は問題が解決したと思い、その話題を切り上げることにした。
が。
「ちょっと待って」
顎髭からの制止がかかる。なんだろう。
「まさかとは思うけど、奥さんとお嫁さんに同じブランケット贈るつもりじゃないよね?」
「駄目なのか?」
きょとんと返すと、顎髭は大きな溜め息を吐いた。
「性別が同じとはいえ、個々に好みがあるだろう? それに手編みのマフラーと好みに合わせたコート、これらに対する対価が同じであっていいと思う?」
「駄目なのか?」
呆れられたが、顎髭は滔々と説明してくれた。
「好みはその人の年代や性格によって違う。君は奥さんと年代も気質も同じだから、奥さんへの贈り物は問題ないだろう。でもお嫁さんは違う感性を持っているはずだ」
現に、と顎髭はマフラーを指差す。
お嫁さんからの贈り物はこの季節のファッションとしては色味が若々しい。これは君の好みがわからなくて、とりあえず自分の好みを反映させたものなんじゃないか?」
顎髭の分析に、眼鏡は感嘆した。そういうところまで見えるものなのか。
それじゃあ、と眼鏡は提案する。
「三日後くらいに贈り物の買い出しに出る。俺では至らない部分が多いことがわかったから、お前の協力を仰ぎたい」
予定は空いているかというと、顎髭は肩を竦めて両手をひらひらと振った。
「僕は暇人だからね。特にやることもないし、一日フリーだよ」
「よし、じゃあよろしく頼む」
「はは」
最終的に問われるのは眼鏡のセンスなのだが、そこは黙っておこう。
「友達とショッピングなんて楽しみだね」
「女じゃないから姦しくはならないだろうが」
それでも楽しみだ。
一緒に買い物に行くような友達なんて、今までいなかったから。
眼鏡が帰ったあと、顎髭は三日後のカレンダーに丸をつけておいた。

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作品ジャンル:純文学, オリジナル作品
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作者名:九JACK | 作成日時:2021年2月27日 3時

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