第58話 ページ9
「いやっ…!!」
私は思いっきり後ずさる。
善逸はそれを優しく受け止めてくれ、勢いがあったが転ばずに済んだ。
「まったく、そんな怖がらなくてもいいじゃない!俺とは初めましてじゃないんだからさ〜」
そう言う男の目は虹色をしていて、張り付いたような笑顔からは何の感情も感じ取れない。
私を支える善逸の足は、恐怖で震えていた。
「ねぇ、君俺のものにならない?」
「は…」
「俺は童磨って言うんだ。こう見えても2回脱獄した指名手配犯!だけどこうして捕まることなく生きている。どう?守られたくなっちゃわない?」
「…………」
童磨、と名乗る男は、まるで炭治郎がただの人形であるかのように普通に話を続ける。
私と善逸はその様子をただひたすらに黙って見つめるだけだった。
「うーん、じゃあまずは君に対する俺の愛の強さを教えてあげる!どこから話そうかな?」
「……せ」
「ん?」
「炭治郎を、離せ…!」
「!」
なにがごにょごにょと言い出したかと思えば、善逸は大きな声で童磨に歯向かう。
私は吃驚して善逸の方を向いた。
「……Aちゃんの視線奪わないでくれる?せっかく俺の方向いててくれたのに」
童磨から笑顔が消え、瞬間私と炭治郎の立ち位置が入れ替わる。
「A…!」
「善逸…!……だ、だめ!炭治郎が!」
「っ…!」
ぐったりとした炭治郎を放っておくわけにはいかない。
私はこちらへ向かってこようとした善逸を制止する。
「ふふ、やっぱり君は心が綺麗だね…君のお母さんもそうだったなぁ」
童磨は再び笑顔に戻り、目を細めて私を見つめてきた。
やめて。その瞳を此方に向けないで。
「君のお母さんはね、児童養護施設で働いていた。一目惚れしたんだ。すっごい綺麗な人だった」
その言葉に善逸がピクリと反応する。
「児童養護、施設…?」
「あは、君は知ってるよね?だってAちゃんのお母さんに会おうとした時、丁度帰ってきたおじいちゃん殺したから。」
「…!…おまえっ…!!」
善逸はどんどん怒りを露にしていく。
「俺、あのあとAちゃんのお母さんが出てくると思って見張ってたんだよね。そしたら君が帰ってきたってわけ。」
ニヤニヤと笑う童磨は、今何を思っているのだろう。
この状況を、楽しんでる?
「やっぱりAちゃんのお母さんだね。君の友達は1番に君を罵倒したけど、お母さんは君のことを最後まで信じてた。」
「だけどもう、君を育ててくれた2人はいないんだよ」
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りお(プロフ) - sera:0012さん» 意外性?みたいなのを出せるように頑張ったので、そう言ってもらえて嬉しいです!! (2020年6月8日 22時) (レス) id: 9caa94bd8c (このIDを非表示/違反報告)
sera:0012 - はわわわわ…まさか童磨が出てくるとは…(・д・)スゲェ…… (2020年6月8日 19時) (レス) id: d4dd6494ae (このIDを非表示/違反報告)
葉桜透 - りおさん» 本当ですか!?私もそう言って頂けて嬉しいです。頑張って下さい! (2020年6月6日 23時) (レス) id: 4d7d5a1664 (このIDを非表示/違反報告)
りお(プロフ) - 葉桜透さん» 葉桜さん…!?わわ、葉桜さんの作品めっちゃ読んでます…!!すごく嬉しいです!!o(*゚∀゚*)o更新頑張ります! (2020年6月6日 23時) (レス) id: e51e299203 (このIDを非表示/違反報告)
葉桜透 - すっごく面白いです!続き、楽しみにしてます(≧∇≦)これからも無理しない程度に頑張ってください、応援してます。 (2020年6月6日 15時) (レス) id: 4d7d5a1664 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:莉桜 | 作成日時:2020年5月24日 20時