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彼女の涙で濡れた真っ直ぐな瞳に貫かれる。

「好き、好きです雑渡様。貴方が、好き。」
「知ってる。知ってるよ。」
「え、」

我に返ったときにはもう遅かった。

しっかりと彼女の震えている華奢な体を抱きしめ、口走っていた。

「私も好きだよ。Aが好き。」
「あ、え…」
「だから、私と一緒になって。祝言を、挙げてほしい。」
「で、では、破談にはなりませんか?雑渡様のお側に、いてもいいのですか。」
「何言ってるの。破談なんてするわけ無いでしょ。」
「だって、だってあんなところを見られ、て…」

それで悩んでいたのか。

なるほどと納得する。

敏感で、でも押しかけ女房になるくらい大胆で、でもやっぱり繊細な彼女らしい悩みだ。

あの状況からして、彼女の貞操が守られていることは明らかだ。

だが貞操を失っていれば、おそらく彼女は自ら私から去っていくであろうことは容易に想像できた。

もしそうなっていたら、彼女はどれほど傷つくだろう。

どれほどの屈辱的な痛みを負ってしまうのだろう。

自分だって正気を保てるとは思えない。

そう考えたとき、助けがぎりぎりで間に合ったことに心底安堵する。

彼女を傷つけるなど、誰であっても許されない。いや、決して許しはしない。

「何があっても手放さない。手放してあげられない。」
「本当ですか?」
「うん。絶対。」
「約束、ですよ。手放したりなんかしたら、怒りますからね。平手打ちじゃ、済まさないんだから。」
「約束。Aには嫌われたくないね。」

はらはらと尚も流れる彼女の涙を、親指ですくい上げる。

彼女の唇に、顔を寄せる。

嫉妬で無理やりしたときとはまるで違う、優しい口づけを彼女に何回も贈る。

「ん、ふふ、雑渡様。」
「やっと想いが通じ合ったんだから、今日は許してくれてもいいでしょ。」
「…今日だけ、じゃなくて…雑渡様なら、いつでもいいですよ。」

ぷい、と照れを隠すように彼女はそっぽを向いた。

そんな彼女が可愛くて、ふ、と笑みが自然に溢れる。

彼女の顔をこちらに向かせて、もう一度、口づけをした。









城の廊下を進む。

あの事件からおよそ二ヶ月。

しっかり休むようにと甚兵衛様やお義父様、雑渡様に言い渡されたので、久方ぶりの登城だった。

ここ二ヶ月の世情の変化は目まぐるしかった。

里に閉じこもっていた私は、なつさんたちからの口伝えでしか情報を得られなかったが、まず、あの男の城が、落とされた。

タソガレドキ城によって。

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設定タグ:忍たま , 雑渡昆奈門 , タソガレドキ   
作品ジャンル:恋愛
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ゆき - ハナイツキさん» 今までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!最初の方から何度もコメントを頂いて、本当に励みになりました!感謝の言葉しかございません。さらなるいちゃらぶを目指しますので、続編もよろしくお願いいたします! (2023年5月2日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ハナイツキ - 完結お疲れ様です!本ッッッッ当に大好きな小説です!もう雑渡さんにキュンキュンしまくりで、最後の結婚のくだりでは涙ぐみながら読むくらい、、続編も読ませていただきます!雑渡さんとのいちゃラブ生活のご提供、本当にありがとうございました!!! (2023年5月1日 23時) (レス) @page50 id: a0586360be (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - ミリリン(・ω・)さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。続編も書こうと思っておりますので、気長にお待ちいただければと思います。続編もよろしくお願いいたします! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - astrumさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!続編については、書いてみようかなと思っております。続編の方も、よろしくお願いいたします。雑渡さんとのいちゃらぶ生活…頑張ります笑 (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ミリリン(・ω・) - え?好きです。 ヤバイですね むっちゃ面白かったです! 続編出たら絶対読みます。 気長に待っています! お疲れ様でした! 素敵な作品をありがとうございました! (2023年3月28日 21時) (レス) @page50 id: 5a9db1aae6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2022年1月30日 0時

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