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ぱらり、ぱらりと書をめくる音を聞きながら、ちくちくと針を進める。

左助くんは書を読み、私は雑渡様の冬用の着物を縫っていた。

心地よい静けさが部屋を包み込んでいた。

しかしちらりと外を見やると、空は灰色に染まっている。

雨が降りそうね、障子を締めておきましょう

そっと立って、縁側の障子を閉めた。

ごろごろと音がなり、しばらくするとざあざあと雨の音が聞こえてきた。

雑渡様、大丈夫かしら…雨に降られてないといいけれど…

今日、ここに帰ってくる雑渡様が、雨に打たれたせいで風邪をひかないかが心配だった。

あら、左助くんたら…おふとんを持ってきてあげましょう

「ふふ」

思わず微笑む。

左助くんは、囲炉裏の火で体が温まって気持ちよくなったのか、うとうとしていた。

左助くんが座っていた座布団を枕にし、左助くんの体を横たえたあと、ふんわりと毛布をかけた。

ぐっすり寝入ってしまったのか、左助くんが目を覚ますことはなかった。

それからしばらく縫い物を続け、雨足がいよいよ強くなってきたわ、と思ったとき、がらりと入り口の戸が開く音が聞こえた。

「ただいま」
「雑渡様!」

きっとずぶ濡れになっているだろうと思い、手ぬぐいを持って急いで入口へ向かう。

そこには案の定ずぶ濡れになった雑渡様が濡れた髪と服を絞っていた。

「寒かったでしょう、お風呂に入りますか?」
「ううん、大丈夫、ありがとう。」
「ご無事で何よりです。おかえりなさいませ。」

雑渡様と目があい、にっこりと笑う。

「ふ、ただいま」

雑渡様の口元が僅かにあがった。

もう一枚の手ぬぐいと、びちょびちょになってしまった忍び装束の代わりに、新しい着物を手渡す。

「温かいお茶を淹れますね」
「うん、ありがとう」
「…う、ん、ざっとさま…?」

雑渡様をよんだ眠そうな声の持ち主は左助くんだった。

「あら左助くん、起こしちゃったわね」
「いえ、良いのです、ねむってしまってもうしわけありませんでした。」
「ちょっと待ってて、着替えてくるから。」

そう言って雑渡様は着替えにいってしまった。

まだ眠気が抜けないのか、左助くんはぼんやりとしていた。

「Aさま、Aさまと雑渡様はふうふなのですか?」
「まあ、そんな、いえ、将来的にはそうだけれども、まだ、まだよ!」
「え、ふうふじゃないのですか?」
「あ、そ、そうだわ、それよりも左助くん、夕餉食べていかない?」

私は話題をそらすのがあまりにも下手だった。

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設定タグ:忍たま , 雑渡昆奈門 , タソガレドキ   
作品ジャンル:恋愛
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ゆき - ハナイツキさん» 今までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!最初の方から何度もコメントを頂いて、本当に励みになりました!感謝の言葉しかございません。さらなるいちゃらぶを目指しますので、続編もよろしくお願いいたします! (2023年5月2日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ハナイツキ - 完結お疲れ様です!本ッッッッ当に大好きな小説です!もう雑渡さんにキュンキュンしまくりで、最後の結婚のくだりでは涙ぐみながら読むくらい、、続編も読ませていただきます!雑渡さんとのいちゃラブ生活のご提供、本当にありがとうございました!!! (2023年5月1日 23時) (レス) @page50 id: a0586360be (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - ミリリン(・ω・)さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。続編も書こうと思っておりますので、気長にお待ちいただければと思います。続編もよろしくお願いいたします! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - astrumさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!続編については、書いてみようかなと思っております。続編の方も、よろしくお願いいたします。雑渡さんとのいちゃらぶ生活…頑張ります笑 (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ミリリン(・ω・) - え?好きです。 ヤバイですね むっちゃ面白かったです! 続編出たら絶対読みます。 気長に待っています! お疲れ様でした! 素敵な作品をありがとうございました! (2023年3月28日 21時) (レス) @page50 id: 5a9db1aae6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2022年1月30日 0時

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