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雑渡様の後をついて行くと、小さな洞窟があった。

「ここは?」
「タソガレドキ忍者の休憩場所。あまり使ってる人はいないけど。」

洞窟の中に腰を下ろす。

今日は暑くなると思い、薄手で出てきてしまったのが仇となったのか、雨のせいで体が冷えてしまった。

ふるふると体が震える。

寒いわね…ああ、羽織るものくらい持つべきだったわ

きゅっと体を抱き込んで、少しでも熱を逃さないようにする。

「寒い?」
「…ええ、少し。」
「おいで。」
「え?」

隣に座った雑渡様がぽんぽん、と自分の膝を叩いた。

「あの、その、膝、ですか…?」
「うん。寒いよりましでしょ」

遠慮しようとするけれど、雑渡様はなお手招きしている。

そろそろと雑渡様に近づく。

ゆっくりと雑渡様の膝に収まると、ぎゅっと抱きしめられた。

びっくりしたけれど、徐々に体は温まっていった。

「温かいです。」
「うん。」
「雑渡様、…好きですよ。」
「…うん。」

ぽろりと本音が漏れた。

雑渡様はその本音を丁寧に拾ってくれた。

ちょっとした言葉でも、逃さず拾ってくれる。

こういうところも、好きでたまらないのだ。

大人しく雑渡様の膝の上に収まっていると、ぽつり、と雑渡様が言葉を漏らした。

「君はさ、」
「はい」
「私の許嫁だよね。」
「まあっ、やっと認めてくださったの?」

嬉しさでぱっと顔をあげようとすると、ぎゅっと抑え込まれてしまった。

「ちょっと今こっち見ないで」
「ふふ、嬉しい」
「…君は…ずっと私の側にいてくれる?」
「はい、もちろん」
「私がどんな姿になっても?」
「当たり前です。」
「…そう」

ぎゅうっと雑渡様の体を抱きしめた。

会話は途切れ、静寂がその場を支配した。

その静寂にのって、眠気が運ばれてくる。

少しずつまぶたが下がり、私が寝つくまで時間はかからなかった。








「…ほんと、お気楽だよね」

すうすう、と寝息をたてる許嫁を抱え込む。

さっきはらしくもないことを言ってしまった。

急に、不安になったのだ。

雨に濡れた許嫁が、どこかへ行ってしまいそうで。

自分から離れていってしまいそうで。

ふるえた彼女は、どこか儚かった。

側を離れられなくなったのは、どちらなのか。

「あーあ、」

気づけば、雨はやんでいた。

彼女を抱えたまま、荷物を持って静かに歩き出す。

里へ続く洞窟を抜けて、屋敷へ向かう。

雨上がりの空には、虹がかかっていた。

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設定タグ:忍たま , 雑渡昆奈門 , タソガレドキ   
作品ジャンル:恋愛
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ゆき - ハナイツキさん» 今までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!最初の方から何度もコメントを頂いて、本当に励みになりました!感謝の言葉しかございません。さらなるいちゃらぶを目指しますので、続編もよろしくお願いいたします! (2023年5月2日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ハナイツキ - 完結お疲れ様です!本ッッッッ当に大好きな小説です!もう雑渡さんにキュンキュンしまくりで、最後の結婚のくだりでは涙ぐみながら読むくらい、、続編も読ませていただきます!雑渡さんとのいちゃラブ生活のご提供、本当にありがとうございました!!! (2023年5月1日 23時) (レス) @page50 id: a0586360be (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - ミリリン(・ω・)さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。続編も書こうと思っておりますので、気長にお待ちいただければと思います。続編もよろしくお願いいたします! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - astrumさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!続編については、書いてみようかなと思っております。続編の方も、よろしくお願いいたします。雑渡さんとのいちゃらぶ生活…頑張ります笑 (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ミリリン(・ω・) - え?好きです。 ヤバイですね むっちゃ面白かったです! 続編出たら絶対読みます。 気長に待っています! お疲れ様でした! 素敵な作品をありがとうございました! (2023年3月28日 21時) (レス) @page50 id: 5a9db1aae6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2022年1月30日 0時

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