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お昼ごはんを食べた直後のことだった。

「あら、どうしましょう。」
「どうしたの」

私の声に、雑渡様が応えた。

雑渡様は今日、久しぶりのお休みの日らしい。

雑渡様の忍び装束ではない、藍色に染められた着物姿を久々に見た。

囲炉裏の側で、本を読んでいる雑渡様の隣に腰を下ろす。

「お野菜がなくなってしまって。明日、お買い物に行く予定だったのですけど。」
「じゃあ、今日いこうか?」
「まあ、よろしいのですか?」
「うん。今日なら私いるし、荷物も楽でしょ。」
「逢瀬ですね!」
「いやちが、」
「すぐ準備します!」

バタバタと部屋で必要なものを揃えた。

「荷物持つよ」
「ありがとうございます」

里を出て、山道を町に向けて歩く。

歩きにくいところでは、すっと手を差し出してくれるところにきゅうっと胸が高鳴った。

「雑渡様、今夜は何が食べたいですか?」
「…この前作ってくれた里芋の煮物が食べたい。」
「ふふ、わかりました」

里芋と大根と、お魚も新鮮なのがほしいわね、それと…

ぼーっと考えていたからだろうか、足元の小石に気づかなかった。

「あっ」
「っと…大丈夫?」

転びそうになった私の体を、雑渡様が受け止めてくれた。

ぎゅっと体が密着する。

「前見ないとあぶないよ」
「ご、ごめんなさい」

着物ごしでもわかる、がっしりとした体。

毎日鍛えているとおっしゃっていたし、肩幅からでも十分にわかるのに、いざ触れると想像以上の逞しさに、ぶわっと羞恥心が吹き出した。

「あの、もう、大丈夫、ですから」

ささっと身を引っ込める。

雑渡様は、ふいっと顔を背けて歩きだしてしまった。

でも、歩く速度は私に合わせてくれる。

歩こうと思えば、もっとさっさと歩けるはずなのに、わざわざ私に合わせてくれる心遣いが嬉しくてたまらなかった。

町へつくと、そこは相変わらず大いに賑わっていた。

「最初はどこ行くの?」
「ええっと…八百屋さん、ですね。その後お魚屋さんに行こうかと。」

八百屋さんでたっぷり野菜を買い、お魚屋さんでも、今日食べる用の生魚と、日持ちのする干物と塩漬けにされたものを買った。

「ふふ、雑渡様、ありがとうございました。これで一週間、お買い物に行かなくてすみます。」
「いや、いつもご飯作ってもらってるしね」

もう一度山道を歩く。

里と町の中間のあたりに差し掛かったとき、雨がいきなり振り始めた。

「まあ、大変」
「ここから里までは少し遠いな。ここで雨宿りしよう。」

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設定タグ:忍たま , 雑渡昆奈門 , タソガレドキ   
作品ジャンル:恋愛
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ゆき - ハナイツキさん» 今までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!最初の方から何度もコメントを頂いて、本当に励みになりました!感謝の言葉しかございません。さらなるいちゃらぶを目指しますので、続編もよろしくお願いいたします! (2023年5月2日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ハナイツキ - 完結お疲れ様です!本ッッッッ当に大好きな小説です!もう雑渡さんにキュンキュンしまくりで、最後の結婚のくだりでは涙ぐみながら読むくらい、、続編も読ませていただきます!雑渡さんとのいちゃラブ生活のご提供、本当にありがとうございました!!! (2023年5月1日 23時) (レス) @page50 id: a0586360be (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - ミリリン(・ω・)さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。続編も書こうと思っておりますので、気長にお待ちいただければと思います。続編もよろしくお願いいたします! (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき - astrumさん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!続編については、書いてみようかなと思っております。続編の方も、よろしくお願いいたします。雑渡さんとのいちゃらぶ生活…頑張ります笑 (2023年3月28日 23時) (レス) id: 11850f2a40 (このIDを非表示/違反報告)
ミリリン(・ω・) - え?好きです。 ヤバイですね むっちゃ面白かったです! 続編出たら絶対読みます。 気長に待っています! お疲れ様でした! 素敵な作品をありがとうございました! (2023年3月28日 21時) (レス) @page50 id: 5a9db1aae6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2022年1月30日 0時

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