私の世界 ページ10
三人称だけど○○目線
暗い…
何も、見えない。
光のない空間で、静かに手を伸ばす。
何も、触れない。
何も、感じない。
何の感触も、何の温度も、何の空気も。
「無」の空間。
静かに、足を動かした。
地についている感じはしない。しかし、体が浮いているような感覚もない。
浮いているようで、浮いていない。
立っているようで、立っていない。
宇宙にいるって、こんな感じなのだろうか、
ボーとした頭で、そんなことを考える。
静かに、息を止めた。
…………………
何秒、何分、何時間、
時間の感覚が分からない。
ただ、いつもの自分よりも、はるかに長い時間、息を止められていたのは確か。
苦しさを感じない。いつまでもいつまでも、息を止めていられる。
ふー
息を吐いた。
ここは、酸素があるのだろうか、無いのだろうか。
無いようである。あるようで無い。
息を止めてもいられるし、息をしてもいられる。
不思議な空間だ。
周りをゆっくりと見回した。
さっきまでいた空間とは、また別の空間に移動したみたいだ。
ここは、どこだろう。
………………
私は、誰だろう。
………………
何も、分からない。
しかし、不思議と、不安は感じなかった。
ここがどこでも、私が誰でも、関係ない。
大切なのは、私はここにいる、という事実。
そう、それだけで、十分だ。
瞼を、ゆっくりと閉じた。
変わらない闇。
気が向けば、目を開けて、どこかに歩いて行ってもいい。
どこにも行かず、ここにいてもいい。
そう、全ては、私が決める。
心地よい優越感が心に広がっていくのを感じ、薄く微笑んだ。
ここは、私の世界だ。
私の世界なんだ。
危険はない。退屈でもない。
ただここにいるだけで、おのずと安心する。
微笑むことができる。
ここはきっと、誰もいないだろう。
まあ、誰かがいてもいい。
気が向けば、その人を探してみよう。いなかったらいなかったで、かまわない。
もし会えたら、話しかけてみよう。どんな人だろう。
とても明るいだろうか。それとも暗い性格か。
どんな声をして、どんな喋り方で、どんな人だろう。
いなければ、自分で作ればいい。
自分で想像して、作り上げる。
自分で、全てを決める。
…なんだろう、この、解放感は。
心に広がる、自由な気持ちは。
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ここは、私の世界だ。
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美羽 - すごくおもしろかったです。 (2月6日 15時) (レス) @page50 id: abf6832c1a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - 涙が止まりません、!こんなに感動するいい話初めてです!これからも応援するので頑張ってください! (11月5日 13時) (レス) @page50 id: b10f41175b (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - ものすごくいい話だと思います。途中で、涙が出て止まらなくなってしまいました。こんなにも感動する話を書けるなんてすごいと思います。全力で応援するので、頑張ってください! (2023年3月11日 20時) (レス) @page50 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - 涙の止め方…誰か教えてください……(´;ω;`)ウッ… (2022年7月20日 9時) (レス) @page50 id: 7969a82418 (このIDを非表示/違反報告)
小三 - 後半涙が出てしまい止まりませんでした。面白い?というかなんだろう。感動してしまう作品ですね。 (2022年4月19日 18時) (レス) @page50 id: a6b1297b7c (このIDを非表示/違反報告)
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