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好き 黒木 ページ7

三人称だけど黒木目線



パチ


リビングの電気をつける。

まず目に入ったのは、テーブルの上に置かれた数枚の札束と、白い紙だった。

ぺら

紙を表に向け、さっと目を通す。

『これで晩は食べておいて。
 今日も、きっと遅くなる。
 それと、最近成績落ちてるんだから、遊び歩いていないで、ちゃんと勉強しなさい。

  母 』

ふっと、笑いが漏れた。

最後だけ、母親らしいことを…しかし、余計なお世話だ。

黒木は、冷蔵庫を開け、勝手に食品を出し、料理を作り始めた。あの人からもらったお金を使うよりは、自分で作ったほうがマシ。

「パスタでも作るか。」

麺を出して茹でる。野菜もまな板にのせた。

トントントン

暗い部屋の中で、野菜を切る音だけが響く。

できた料理は、機械的に口に運ぶ。おいしいだとか、そういうものは、全く感じない。まずい訳でもない。味はもちろんあるが、黒木的に言えば「無味」だった。

その料理には、まったく温かみがない。


食べ終わり、洗浄機で食器を洗っている間に、庭に出る。

冷たい輝きを放つ満月が、夜の闇を照らしている。

黒木は、庭にあったベンチに腰掛けると、黙って満月を見上げた。

アーヤ…………

満月を見ると、いつも黒木は、彩のことを思い出した。

怪しげな光を放つ満月。眠り続ける彩が、まるで、物語に出てくるかぐや姫のように思えたのだ。

もう、自分たちの元に戻ってくることはないかぐや姫。そんなかぐや姫を、竹取の翁夫婦はどんな思いで思い出していたのだろう。

何かつっかえていたものは吐き出すように、黒木は溜息をついた。

そんな事を考えたい訳じゃない。しかし、気が付くといつも、そんな事を考えてしまっていた。

そんな自分の性格が、恨めしくなる。

何かをする度に、彩の事を思い出す。彩と関係のあるもの全てが、黒木の胸にあの笑顔を思い浮かばせていた。

ずっと、好きだった。愛していた。

いまさらになって、そんな事を考えていた。



どこかで聞こえてきそうな、あの声。

今すぐにでも、聞きたい。愛おしい、澄んだ声。

゛女ったらしの黒木君。″
゛黒木君、大丈夫?″
゛黒木君っ!!″





゛大好きだよ、黒木君……。″





ツー

涙が一筋、頬を伝った。



「アーヤ……。」


息が、詰まりそうだった。



アーヤ…アーヤ……!

心が、欲していた。



あの、笑顔を。








…………愛してる、アーヤ。

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美羽 - すごくおもしろかったです。 (2月6日 15時) (レス) @page50 id: abf6832c1a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - 涙が止まりません、!こんなに感動するいい話初めてです!これからも応援するので頑張ってください! (11月5日 13時) (レス) @page50 id: b10f41175b (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - ものすごくいい話だと思います。途中で、涙が出て止まらなくなってしまいました。こんなにも感動する話を書けるなんてすごいと思います。全力で応援するので、頑張ってください! (2023年3月11日 20時) (レス) @page50 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - 涙の止め方…誰か教えてください……(´;ω;`)ウッ… (2022年7月20日 9時) (レス) @page50 id: 7969a82418 (このIDを非表示/違反報告)
小三 - 後半涙が出てしまい止まりませんでした。面白い?というかなんだろう。感動してしまう作品ですね。 (2022年4月19日 18時) (レス) @page50 id: a6b1297b7c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年4月23日 13時

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