好き 上杉 ページ6
三人称だけど上杉目線
「ごっそさん。」
箸をおき、手を合わせる。
がたっと音を立てて、椅子から立ち上がった。
「和典、少なくない?もっと食べないと。」
…………
黙ってリビングから出る上杉。
後ろで、母親がため息をつくのが分かった。
しかし、気にせずに、2階に上がり、自室に入ってドアを閉めた。
勉強机に向かい、やりかけのテキストに向かい、シャーペンを握った。
「…………。」
しかし、まったく集中できない。
「…くっそ。」
短い髪の毛をかき回し、集中しようと努力するが、まったく勉強に身が入らなかった。
今日も、これだ。
あの時______________一年前から、まったく、勉強に身が入らない。
自分のプライドである数学だけは何とか首位を保っているが、もともと苦手だった国語などは、壊滅的だった。
上杉は溜息をつき、シャーペンを放り出した。
椅子の背もたれにもたれ、窓から外の風景をぼんやりと眺める。
神々しい輝きを放つ満月が、暗い夜空で光っていた。
「立花…………。」
その言葉を発した途端、胸が苦しくなった。
唇を噛む。
目を閉じれば思い浮かぶ、彩の顔。
目覚めること自体を拒否しているかのような、その姿。
その顔には、以前のような、輝くような笑顔の面影など、微塵も感じられなかった。
彩の笑顔。ふっと小塚に漏らしたことがあるが、あの笑顔を見るだけで、喜びで心臓が爆発しそうになる。
自分がどれだけ彩を愛しているのか、痛いほどに感じる。
もう一度、彩の笑顔を見られたら、どんなにか嬉しいだろう。
上杉は、だらんと下げていた拳を、ギュッと握りしめた。
そのためなら、何でもできる。彩の笑顔のためならば……
しかし、実際問題、自分が彩にできることは、何もないのだ。そのことが歯がゆく、悔しかった。
……満月、もし、願いを聞いてくれるなら。
目を閉じる。
立花……………
頼むから、もう一度……………
あの笑顔で、笑って。
あの声で、上杉君、と呼んで。
もう一度……。
゛数の上杉君。”
゛上杉君、すごいっ!″
゛ごめんね、上杉君。″
_________________________。
・
゛大好き。上杉君。″
・
「………くっ。」
嗚咽が漏れた。
ポロ、何滴かの涙が、上杉の目から零れ落ちる。
「立花………。」
立花…………。立花………………。
・
…好きだ。
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美羽 - すごくおもしろかったです。 (2月6日 15時) (レス) @page50 id: abf6832c1a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - 涙が止まりません、!こんなに感動するいい話初めてです!これからも応援するので頑張ってください! (11月5日 13時) (レス) @page50 id: b10f41175b (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - ものすごくいい話だと思います。途中で、涙が出て止まらなくなってしまいました。こんなにも感動する話を書けるなんてすごいと思います。全力で応援するので、頑張ってください! (2023年3月11日 20時) (レス) @page50 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - 涙の止め方…誰か教えてください……(´;ω;`)ウッ… (2022年7月20日 9時) (レス) @page50 id: 7969a82418 (このIDを非表示/違反報告)
小三 - 後半涙が出てしまい止まりませんでした。面白い?というかなんだろう。感動してしまう作品ですね。 (2022年4月19日 18時) (レス) @page50 id: a6b1297b7c (このIDを非表示/違反報告)
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