検索窓
今日:2 hit、昨日:19 hit、合計:404,527 hit

好き 上杉 ページ6

三人称だけど上杉目線



「ごっそさん。」

箸をおき、手を合わせる。

がたっと音を立てて、椅子から立ち上がった。

「和典、少なくない?もっと食べないと。」

…………

黙ってリビングから出る上杉。

後ろで、母親がため息をつくのが分かった。

しかし、気にせずに、2階に上がり、自室に入ってドアを閉めた。

勉強机に向かい、やりかけのテキストに向かい、シャーペンを握った。

「…………。」

しかし、まったく集中できない。

「…くっそ。」

短い髪の毛をかき回し、集中しようと努力するが、まったく勉強に身が入らなかった。

今日も、これだ。

あの時______________一年前から、まったく、勉強に身が入らない。

自分のプライドである数学だけは何とか首位を保っているが、もともと苦手だった国語などは、壊滅的だった。

上杉は溜息をつき、シャーペンを放り出した。

椅子の背もたれにもたれ、窓から外の風景をぼんやりと眺める。

神々しい輝きを放つ満月が、暗い夜空で光っていた。

「立花…………。」

その言葉を発した途端、胸が苦しくなった。

唇を噛む。

目を閉じれば思い浮かぶ、彩の顔。

目覚めること自体を拒否しているかのような、その姿。

その顔には、以前のような、輝くような笑顔の面影など、微塵も感じられなかった。





彩の笑顔。ふっと小塚に漏らしたことがあるが、あの笑顔を見るだけで、喜びで心臓が爆発しそうになる。

自分がどれだけ彩を愛しているのか、痛いほどに感じる。

もう一度、彩の笑顔を見られたら、どんなにか嬉しいだろう。

上杉は、だらんと下げていた拳を、ギュッと握りしめた。

そのためなら、何でもできる。彩の笑顔のためならば……

しかし、実際問題、自分が彩にできることは、何もないのだ。そのことが歯がゆく、悔しかった。





……満月、もし、願いを聞いてくれるなら。


目を閉じる。




立花……………


頼むから、もう一度……………

あの笑顔で、笑って。

あの声で、上杉君、と呼んで。

もう一度……。


゛数の上杉君。”
゛上杉君、すごいっ!″
゛ごめんね、上杉君。″




_________________________。


















゛大好き。上杉君。″



















「………くっ。」

嗚咽が漏れた。

ポロ、何滴かの涙が、上杉の目から零れ落ちる。

「立花………。」




立花…………。立花………………。











…好きだ。

好き 黒木→←好き 若武



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (706 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
193人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

美羽 - すごくおもしろかったです。 (2月6日 15時) (レス) @page50 id: abf6832c1a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆ - 涙が止まりません、!こんなに感動するいい話初めてです!これからも応援するので頑張ってください! (11月5日 13時) (レス) @page50 id: b10f41175b (このIDを非表示/違反報告)
イズミ - ものすごくいい話だと思います。途中で、涙が出て止まらなくなってしまいました。こんなにも感動する話を書けるなんてすごいと思います。全力で応援するので、頑張ってください! (2023年3月11日 20時) (レス) @page50 id: 6ccf209779 (このIDを非表示/違反報告)
彩花 - 涙の止め方…誰か教えてください……(´;ω;`)ウッ… (2022年7月20日 9時) (レス) @page50 id: 7969a82418 (このIDを非表示/違反報告)
小三 - 後半涙が出てしまい止まりませんでした。面白い?というかなんだろう。感動してしまう作品ですね。 (2022年4月19日 18時) (レス) @page50 id: a6b1297b7c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:花畑 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2016年4月23日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。