君と私は似ていない ページ29
すっかり秋色へと染まろうとしていた。半袖は徐々に長袖にする人が増え、私もそのうちの一人。七分まで袖を折り、指定のベストを着る季節へと移り変わる。体育祭の準備に飽き暮れるそんな日々だった。
「A、ペンキとってきてー！」
面倒くさがりの癖に体育委員になってしまった友人の指示で職員室へ向かう。体育祭のTシャツのデザインやクラスごとの旗の制作。慌ただしく人が駆け出す。
「Aさん」
水を打ったようだった。職員室の扉の前に同じように並んだ、あの隣のクラス彼女。香水の匂いは、今も健在だ。
『……なに？』
冷たい声が出ただろう。貴方に構ってる暇はないのだ。今更、コネシマ君たちとの関係を言われても、つい先日仲を深めたばかり。私と彼は、ちゃんと友達になったのだ。怪異なんて関係なく。
・
「ゾム君との噂流したの、私なの」
アイロンで巻かれた髪が、揺れる。きらめくアイシャドウ。長く引かれたアイライン。自分の魅せ方を知っている人。最低限だけを行う私とは、正反対だ。
―――嫉妬かもね
・
・
『羨ましいんでしょ。嫉妬だ』
彼女の目がつり上がる。顔を大きく歪めた彼女に胸倉を掴まれた。地味に痛いが、絶対に譲らない、
『コネシマ君と仲良くなれないのは、彼の視界に入れないのは私のせいじゃない、君自身のせいだよ』
「…あんたがっ、あんたがコネシマ君たちと仲良くしなければ、」
彼らはきっと、主役なのだろう。彼女たちが学校に行く理由になるような人。希望だ。誰もが願うだろう。どうか、彼らから"特別"を与えられますように。どうか、彼らの"特別"になれますように。短冊にも、神様にも願うだろう。喉から手が出るほど欲しいのだ。
彼女の瞳の奥がぐるぐると回っている。おぞましい程の黒色だ。あぁ、憎いのか、私が。半端な気持ちじゃない。狂ってもいい程、彼らが欲しいのだ、この子は。
でも、あんたが簡単になれると思うな。彼の友人になれると思うな。
『死にかけたこともない癖にっ、』
数拍置いて、彼女は呼吸を取り戻す。瞳の黒は光を取り戻し、ハッと何かに気付いた顔をした。長い睫毛が、上下に動く。
「もしかして、使ったの？」
力なく胸倉から小さな手が離れていく。怒りに塗れた彼女が、まるで盲点だったかのように声をあげる。
・
・
「両想いになれるおまじない」
ラムネの中のビー玉は二度と出れないのにね→←君と友人になるただ一つの方法
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 446人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
@眠猫。(プロフ) - 弓矢さん» 最初はホラーと恋愛の混合が難しく、挫折しそうになりましたがそう言っていただけて本当に最後まで書き続けてよかったなと思います。しばらく更新の予定はないですが、どこかで番外編など書けたら楽しそうだなとは思います。その時はまた、読んでいただけると幸いです。 (2022年1月10日 20時) (
レス) id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
弓矢(プロフ) - みんなかわいくて素敵で好きです。私の少ない語彙だと上手く言えませんが、空気感も好みで尚且つそれが直に伝わる様で読んでてとてもゾクゾクしました。最後の方もゾクゾクしつつも一周回ってワクワクしながら読み進めました。とても面白かったです。有難うございます。 (2022年1月8日 8時) (レス) @page50 id: 8d1caf834f (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - 李白さん» 初めまして。この度は数ある作品の中から私の作品を読んでいただき、ありがとうございます。完結して2か月ほど経ちましたが、まだこのような言葉を頂けることに感無量です。お時間ありましたら是非、また覗いてやってください。またどこかで会えますように。 (2022年1月2日 20時) (レス) id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
李白 - 初めまして。作品全て読みましたが解説を見て鳥肌が立ちました。最高です。この作品に出会えて良かったです (2022年1月1日 11時) (レス) id: 1cec622168 (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - このはさん» 返信遅くなりました。この度は私の作品を読んでいただきありがとうございます。練りに練ったお話だったのでそう言っていただけるととても嬉しいです。またどこかで会えましたら、よろしくお願いします！ (2021年11月16日 22時) (レス) id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：@眠猫。 | 作成日時：2021年8月28日 17時
