またねって言いたかったのに ページ18
コネシマ君の後輩が、私に何か用だろうか。
「コネシマさんと最近、仲良いって聞いたんで」
コネシマ君たちと同じ、訛りのある話し方。落ち着いた声の彼は、私と同じように花壇の前にしゃがみ込む。彼はゆっくりと口を開け、第一声に"コネシマさん"と呟く。コネシマ君が前に、生意気な後輩がいると言っていた割に、嬉しそうに話していたのを思い出す。よかったね、コネシマ君好かれてるよ。と頭の片隅で思う。
「コネシマさん、最近っていうか、夏休み明けてからしんどそうで、」
心当たりは、ある。きっとあの視線だ。豪快なコネシマ君が顔色を悪くしていたところを見たのは、あの時だけだから。
・
・
「…A先輩じゃないんですか、」
『え、』
・
「コネシマさんを苦しめてるのは、A先輩なんじゃないですか?」
少し、友好的に感じていた。元気の塊っていうよりも考えて動くタイプで、あまり話さない。物静かな後輩君。なのに、その視線は鋭くて、冷たくて、思わずしりもちをついてしまう。
『…違う、』
「信じるわけないやろ」
チャイムが鳴った。授業が、終わった。取り残された私は、動けないまま、風に任せて髪を揺らすばかり。ちゃんと目を見て、責められた。彼の瞳は、私の言葉を聞いてくれない様子で、チャイムと同時に立ち上がって消えていった。このことを、コネシマ君に話すべきか。でも、私は何も悪くない。堂々としていよう。なのに、
上手く呼吸が、できない。
・
・
・
ゾム君との噂は相変わらず続いていた。私の予想通り、手を繋いで門まで駆け抜ける私たちを見ていたらしく、たかが手を繋いでいただけじゃないかと、悪態をつけなくなった。
「ゾム君と付き合ってるってほんと?」
風邪で休んでいた、いつも爆弾発言を落とす友人が久々に登校し、私の隣の席に腰を下ろした。肘をつき、いつもと変わらない友人の瞳を見ながら首を振る。すると彼女は豪快に笑って、
「久々に行ったら皆Aのこと噂してて笑った」
『笑い事じゃないよ』
「A、ゾム君たちとは関わらないようにしてきたのにね。あり得ないのにね」
いつものように、狡い笑顔を見せた。この噂で、2人の友人を失ったが、彼女だけは、いつも私の隣に居てくれた。高校でできた、初めての友人だった。
446人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
@眠猫。(プロフ) - 弓矢さん» 最初はホラーと恋愛の混合が難しく、挫折しそうになりましたがそう言っていただけて本当に最後まで書き続けてよかったなと思います。しばらく更新の予定はないですが、どこかで番外編など書けたら楽しそうだなとは思います。その時はまた、読んでいただけると幸いです。 (2022年1月10日 20時) (レス) id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
弓矢(プロフ) - みんなかわいくて素敵で好きです。私の少ない語彙だと上手く言えませんが、空気感も好みで尚且つそれが直に伝わる様で読んでてとてもゾクゾクしました。最後の方もゾクゾクしつつも一周回ってワクワクしながら読み進めました。とても面白かったです。有難うございます。 (2022年1月8日 8時) (レス) @page50 id: 8d1caf834f (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - 李白さん» 初めまして。この度は数ある作品の中から私の作品を読んでいただき、ありがとうございます。完結して2か月ほど経ちましたが、まだこのような言葉を頂けることに感無量です。お時間ありましたら是非、また覗いてやってください。またどこかで会えますように。 (2022年1月2日 20時) (レス) id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
李白 - 初めまして。作品全て読みましたが解説を見て鳥肌が立ちました。最高です。この作品に出会えて良かったです (2022年1月1日 11時) (レス) id: 1cec622168 (このIDを非表示/違反報告)
@眠猫。(プロフ) - このはさん» 返信遅くなりました。この度は私の作品を読んでいただきありがとうございます。練りに練ったお話だったのでそう言っていただけるととても嬉しいです。またどこかで会えましたら、よろしくお願いします! (2021年11月16日 22時) (レス) id: 91126b09d4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:@眠猫。 | 作成日時:2021年8月28日 17時