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男が崩れ落ちるのを見届けて私は両手で目を覆った。
熱い、熱い。熱い。
目が、脳が、心臓が溶けてしまうと錯覚してしまうほどの熱量が身体中を駆け巡っている。
身を焦がすほどの熱量がどこにも放出できないまま、私は力を振り絞り歩みを進めた。汗と血をだらだらと垂らしたまま。
「い……かな、きゃ。」
どこに、と心の中で誰かが呟いた。
どこへなんて決まっている。あの子のところへだ。沸騰しそうな脳を回転させ何も写らない目の奥に少女の姿を描き出す。
幼い女の子が私に手を伸ばしている。ここから逃げ出してしまおうとささやいている。外に行けば私たちは生きられる。外に、行けば。
私は力の入らない足を引きずりながら前に進んだ。
頭がクラクラと揺れ、記憶と意識が混濁する。もはや自分がどこにいるのかもわからない。ただ誰かを探し求めて私は呪霊の横を通り過ぎた。
そのとき、私の足が倒れた男の体に当たり私はその場に転んだ。
ドサリと膝を地面につき、そのまま手も地面につく。
もう立ち上がれないだろう。ブルブルと震える両腕を眺めながら私は他人事のようにそう思った。私が心から害したいと願った男はたった今死んだ。熱を向ける矛先を失った私はもう動けなくなっていた。
かくんと腕が曲がって頭が落ちる。また地面と衝突すると目を瞑った瞬間、誰かが私の腕を掴んだ。
大きな男の人の手だった。
その人は力を失った私の上半身を後ろに引っ張り起き上がらせると、私を後ろから抱きしめた。
太くたくましい腕が私の腰や胸元に回る。
「ははっ。」
熱い吐息が私の耳裏に当たった。熱い腕でぎゅっと慈しむように私を抱きしめたままその人は囁いた。
「今の、なに？」
ありえない。
ゆっくりと覚醒し始める意識の中で、私は自分に言い聞かせた。
どうして、どうしてまだ生きているの？確実に、目で殺したはずなのに。
ドクン、ドクンと鼓動を早めていく心臓の上に男は手を滑らせ、そして私を振り向かせた。
私の視界一杯に、薄い空色の髪が広がった。
「ああ、綺麗だ。綺麗だなあ。」
呪霊は私の頰を手で包み、私の下瞼を親指で撫でながらそう言った。先ほどまでとは違い、熱を帯びたその瞳に私は恐怖した。
息がうまく吸えない。はっ、はっと浅く息を吐く私の唇に呪霊は触れ、そして顔を近づけた。
ちゅ、と唇が触れ合う音が響いた。
目を閉じることもできずに固まった私にそいつは優しく優しく微笑んだ。
「好きだよ、小松A。」
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しょーどくえき - わ！すっごくおもしろいです！続きがとても楽しみです！頑張ってくださいね！ (2021年6月20日 16時) (
レス) id: 5790125387 (このIDを非表示/違反報告)
猫かぶり - 今は死滅回遊ですよ!!!続きがとても楽しみです!!! (2021年5月21日 20時) (レス) id: 94bc23990d (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 無気力なおバカさん» コメントありがとうございます！この展開は読者様には不評かも、なんて考えている折だったので、これからの展開が楽しみというお言葉に救われました！更新頑張ります。 (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
柑橘(プロフ) - 糸野さん» コメントありがとうございます！スリルのあるなんて素敵な言葉をいただけて嬉しいです。更新が滞っていますがこれからもドキドキさせられるよう頑張ります！ (2021年1月2日 23時) (レス) id: c6d1d3b3eb (このIDを非表示/違反報告)
無気力なおバカ - 面白いです。これからの展開がすごく楽しみです。キャラ達の関係とかもすごく好みです。更新頑張って下さい！ (2021年1月2日 3時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柑橘 | 作成日時：2020年11月28日 17時
