第18話 ページ20
ひたすら飛び続け、気づけば下には大地があり日も既に沈みかけている。ゆっくりと下降し、見覚えのある場所を通り過ぎ、巨大なレンガ造りの壁が影となっている草地に降り立った。
『ここ……』
先程見えた場所はかつてアーマーガアの巣穴があった場所。光の柱が立っていたから既にほかのポケモンの巣穴になったのだろう。
つまり、ここはワイルドエリア……ガラル地方まで飛んで来たというわけである。
飛び続け、冷静になった思考で自分がとんでもない事をしてしまったと気づいたAはこれからどうすればいいのか途方に暮れていた。
兄が自分を心配しての行動だと頭の隅で理解していた。今までだって兄と一緒に、支えられながら生きてきた。
しかし、自分はそんな兄に対して酷いことを言ってしまった。きっと傷つけただろう。
……だからといって、イッシュに戻って兄に謝る勇気は自分にない。
イッシュに戻ることは出来ない、だからといって今自分は何も持っていない。
故郷では無い大地でひとりぼっち。
流石の長旅にアーマーガアも疲れたのか、Aに寄り添うようにして足を折りたたんだ。
『ごめんね、疲れたよね。ありがとう、アーマーガア』
モンスターボールを出しアーマーガアを仕舞おうとすれば彼は首を振りグイグイと頭をAに擦り付ける。ボロボロの泣き顔の彼女を慰めるかのように。
『……』
彼の意図を察したのか、Aは再び顔をしわくちゃにして泣き始めた。
自分の突拍子もない行動に文句ひとつ言わず、こんな長い距離をずっと飛び続け、疲れているだろうに自分を心配して1人にさせまいとそばにいてくれている。
『ぅ、ゔ〜〜〜ッ!』
ぎゅうとアーマーガアを抱きしめながら嗚咽を漏らす。ここまで来て今更何をと自分でも呆れてしまう。それでもやはり寂しくて、怖かったのだ。
今までずっと、兄に守られていたんだと改めて思い知ったのだ。
アーマーガアの羽毛に埋もれながら泣き続けていたAは背後から来る人影に気付かなかった。
「君、大丈夫かい!?」
─────
「そりゃ怒るよ」
現在、ノボリとクダリは両親の前で正座をし、コンコンと説教をされていた。
「ノボリ、クダリ。仮に貴方達が旅に出る前日に、旅を延期しなさい、もしくは私と父さんを倒さなければ認めないと言われたらどう思います?」
クダリ「……ヤダってなる」
「Aも同じ気持ちだったんだよ」
「「……」」
「ひとまず、ジュンサーさんの連絡を待とう」
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作者名:黒梨 | 作成日時:2023年5月16日 22時