命短シ、羽バタケ乙女 (ページ19)

今日:22 hit、昨日:9 hit、合計:14,271 hit

第17話ページ19

為す術なく飛んで行ってしまった妹の姿を見て漸く何が起きたのか理解したノボリとクダリは今生で最もと言っていいほどの声量で絶叫した。どうしたんだと出てきた両親の耳がしばらく遠くなる程には。

阿鼻叫喚の我が家を背に、Aはアーマーガアの背に乗って思わぬ形で旅立ち、まだ見ぬ世界へと羽ばたき出したのである。

────

遥か上空を飛んでいる現在、どこに向かっているのかAは知らない。ただ兄のいるイッシュ地方から遠く離れた場所ならばどこでもいいと考えていた。
行先をアーマーガアに委ね、Aは泣きながら空を見ている。そんな彼女にアーマーガアは何も言わず空を飛ぶのみ。

ショックだった。
確かに、兄は過保護な面もある。自分が死にかけた過去もあってそれは多少は仕方がないと思っていた。
けれど、一人前のポケモントレーナーになるにあたって旅は必須とも言える成長過程の一つだ。
兄だって、私を置いて旅に出ていったし、自分もそれを笑顔で見送った。

だから、私が旅に出る時も送り出してくれると思っていた。
兄は常日頃ポケモンバトルが大好きだし、いつかポケモントレーナーになったらAも一緒にバトルしようと言っていた。
勿論、私もポケモンバトルに興味があったし、ポケモンと絆を結んで一緒に生活する事に憧れがあった。アーマーガアとも出会って、その気持ちは日毎に強くなるばかりで。

『……』

すごく、楽しみにしていたのだ。
それを直前になって、延期しろだとか兄も一緒に行くだの好き勝手言って、挙句の果てに自分達をバトルで倒さないと旅に出るのは許さないと言い出した。

『……兄さんのｯ、ばかーーーーーーー！！！！』

──────

A…
この度ブチ切れて兄の目の前でダイナミック家出をキメる。
兄譲りの声量で2人にハイパーボイスを食らわせる。

大人気ない兄①…
妹の一人旅やっぱり不安だし自分たちの傍から離れないで欲しいがために大人気を殴り捨てた。妹からばかと言われこんらんし、大嫌いといわれひんしになった。
こっちの兄はばくおんぱが使える。

大人気ない兄②…
もし旅に出て妹が危ない目にあったら……と考えるだけでもうダメなので大人気を放り投げた。妹のハイパーボイスはこうかばつぐんだ！
こっちの兄はばくおんぱは使えない。

アーマーガア…
主人が飛べと言うのでただ飛ぶのみ。行先は決めてる。今はそっとしておいた方がいいと分かっている。多分この中で1番大人。

両親…
耳が痛い