第12話 ページ14
それから来る日も来る日も、Aは父親にねだりあの巣穴のアーマーガアの元へ訪れてはきのみを渡し、時折その背中に乗せてもらい空を飛ぶこともあった。
そんな1人と1匹の奇妙な交流も終わりが近づいている。
ネズ「あさってにはかえっちまうんですね……」
『うん。父さんのしごともなんとかおわったみたいでさ。ギアステーションにいつまでも居ないのもだめだから』
ネズ「……さびしくなりますね」
『……うん』
ガラルにいる間、度々スパイクタウンに訪れてはネズの家に行きポケモンについて話したり、時には2人でネズの案内の元ガラルの街を出かけたりもした。
この短い期間と言えど友達と言えるには十分な時を過した相手との別れはやはり寂しかった。
ネズ「親にいってくうこうまでみおくりにいくよ」
『ほんと?』
ネズ「ウソいってどうするんです」
『うれしい、ありがとネズくん』
にっこりと笑ってお礼を伝えるAにネズは照れたようにポリポリと頬をかく。
ネズ「べつに……。それよりA、アレはどうするんです」
『?』
ネズ「アーマーガアのことだよ」
『!……どうするって』
ネズ「つかまえないんですか?」
『つかまえるって……だってわたしポケモンもってないからつかまえようにも……』
モゴモゴと口ごもる様子に深いため息を着く。
ネズ「バトルしなくてもつかまえることはできるでしょ」
『で、でも……』
ネズ「ハァ……いいですか!」
『はっはい!!』
ネズ「ほうほうをきいてるんじゃなくて、オマエのきもちはどうなんです!?」
『えっ、きもち?』
ネズ「そうです。あのアーマーガアとまいにち会ってたんでしょう?それでAはどうおもったんです?」
『……』
ネズ「このままなにもしなかったら、ほかのトレーナーがあのアーマーガアをつかまえちまいますよ」
『!それはやだ……!』
あのアーマーガアが、他の誰かのポケモンになってしまうのが自分でも驚くくらい嫌だと思った。
我ながらすごく自分勝手な気持ちに苦笑する。
……自惚れだと思うし、すごく馬鹿みたいな話だけど、あのアーマーガアとは何か、運命を感じた。あの日、こうなる事が決まっていたような気がした。彼の背中に乗って空を飛んだ時、きっとこれが私の未来なんだと思った。
顔を上げたAの目に既に迷いは消えている。
そんな彼女の顔を見て、ネズは満足そうに笑う。
ネズ「で、どうするんです?」
『わたし、アーマーガアに会ってくる!!』
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作者名:黒梨 | 作成日時:2023年5月16日 22時