第11話 ページ13
はいどうぞ!と元気よくきのみをひとつ掴んでこちらに無邪気に向けるその様子に毒気を抜かれたアーマーガアは、キョダイマックスを解きAの目の前に降り立つ。
自分よりも遥かに小さい人間の子供を見下ろす。威圧を与えているはずなのにその子供は怯むことなく、むしろ自分が目の前に来たことを嬉しそうにし、袋の中のきのみを次々と出しては自分に向けた。
『オボンのみとかモモンのみとか、いろいろあるよ!ぜんぶあげる!』
はいと差し出されているオボンのみを見つめる。
邪気のないキラキラした目でこちらを見てくる様子からして裏がある訳でもないのだろうと、お腹も空いていたしとアーマーガアはそっとその手からきのみを食べる。人間が自分たちよりも脆く簡単に傷つくことは知っていたので、嘴の先端が手に当たらないように細心の注意を払った。
別に人間が傷つこうが知ったこっちゃないが、この小さい命を傷つけるのはなんだかはばかられたのだ。
『きのうはたすけてくれてありがとう』
そう言ってまた今度はモモンのみを差し出す子ども。
それを言う為だけに態々また巣穴に落ちてきたのか?自分の気まぐれに過ぎなかったあの行為に、きのみまで持ってきて、自分に襲われるかもしれないにも関わらず?
『……』
無言できのみを食べ続ける自分をただ嬉しそうに見つめてくるお礼を言う為だけにここに落ちてきた人間。
「……」
へんなやつだ。
「A〜……!」
巣穴の外から別の人間の声がする。
きっとこの子供の親だろう。
『あ』
「?」
『どうやってもどればいいんだろ……』
「……」
そういえばと、落ちたはいいが戻り方を考えていなかったことを思い出したA。
そんなAをお前マジかと言った顔で見つめるアーマーガア。
『……よし』
流石に2度もお世話になるわけにいかないし、何よりお礼を伝えた相手の負担になるわけにはいかないと、腹を括ったAは壁を登り始めようと岩に手を伸ばした。
巣穴の出口まで相当な高さがある。そんな小さい体で岩壁を登りきるなんて無理な話だ。下手したら落下して大怪我をするだろう。
見かねたアーマーガアはAをさっと背に乗せ、再び彼女を巣穴の外に出してやったのだった。
そしてまさか、Aがまたそのお礼にときのみをもって自分の元を訪れ、それが日々の日課になる事をこの時は知る由もなかった。
──────
A…
アホ
アーマーガア…
やれやれ……
双子…
今すぐガラルに凸りたい
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作者名:黒梨 | 作成日時:2023年5月16日 22時