第9話 ページ11
『??』
真っ逆さまに落ちていったAは現在の状況を飲み込めないでいた。
勿論それは彼女のクッションとなったポケモンも同じだった。
落ちた先は硬い地面……ではなくフサフサとした羽毛のような中。
羽毛といっても柔らかさよりも硬さが勝っているそれはひんやりしている。
一体何が起きたと起き上がろうとするよりも前に、羽毛のヌシが動き出した。
『!?』
ワサワサと身を振るうポケモンに為す術なくAはコロコロとその巨大な体の上を転がりポトリと地面に落ちた。
『いたい……』
落ちた拍子に尻もちを着いたAは涙目になって目の前を見上げ、唖然とした。
想像を絶する巨大な体に翼。頭上には暗雲がたちこめており、周りは小さな鳥の様なものが漂っている。
赤い瞳がこちらを捕える。
『……』
不思議と恐怖より、魅了される気持ちの方が大きかった。
その巨大な翼で一体どこまで飛べるのだろうか?鎧のようなその体はどれほど力強いのか?……後にAはこの時の感情を初恋のようなものだと話し、ノボリとクダリを卒倒させた。
キラキラとした目でこちらを見つめる小さい人間にこの巣穴のヌシは吃驚していた。
まさか自分の上に落ちてくるとは思わなかったし、まさかこんな小さい子供だとも思わなかったので暫く動けず、両者ともに見つめ合っていた。
先に動いたのはヌシの方だった。
地面に降り立ち、巨大なその顔をAに近づける。
通常であれば、自動車並みに大きな嘴が近づいたら誰でも恐怖するし食べられるんじゃないかと怯えるだろう。
しかしAは興味津々にその嘴にペタりと触れた。
これにはヌシも驚いた。
しかし、嘴に触れる手は小さくて柔らかく、温かみを持っていて不思議と不快ではなかった。
『あ』
暫くするとヌシは大きくひと鳴きし、巨大な体を小さくした。
それでもAの身体よりも圧倒的に大きいヌシは、Aをポンと背に乗せ、巣穴の出口まで飛び立った。
『わ、あ……!』
振り落とされないようにその体にしがみつく。
グンと空へ上がっていく時の重力、髪をさらっていく強い風を受けAはヌシに乗って巣穴を飛び出した。
「A!!」
巣穴を出れば目の前には父親が他のトレーナーと共に巣穴を囲んでいた。
スタッフであろう人が怪我はないかとチェックが満遍なく行われ、無事だと確認が取れたのでその場で開放された。
このポケモンが助けてくれたと、アーマーガアというポケモンを見れば既に姿は無かった。
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作者名:黒梨 | 作成日時:2023年5月16日 22時