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ふわりと頬を撫でる風。
心地の良い沈黙が流れる室内をぐるりと見渡せば、クマさんに入っていた綿が詰め込まれたビニール袋。その反対側には真新しい綿。
「こんな風に…」
「ん？」
「こんな風に、人間の頭もオーバーホール出来たらな、なんて良く思いました」
嫌な記憶を全部取り除いて、真っ新な、新たに記憶を描くキャンバスを空いたスペースに詰め込んで、新たなスタートを切れたら、なんて夢物語を何度想像しただろう。
「でも、その嫌な記憶も今の俺の一部なんですよね…」
マサさんに、祐希に、みんなに教えて貰った。
例えどんなに苦くて、痛くて、思い出す度に泣きたくなる程の過去でも、それがあるから今の俺があるんだ。
もしかしたら、その記憶が無ければ、今こうしてマサさんと一緒にいるなんて未来は無かったのかもしれない。全日本に召集されるなんて事は無かったのかもしれない。バレーをこんなに好きになっていなかったのかもしれない。
そうなのだとしたら、過去の記憶も少しだけ大事だと思えるから不思議なものだ。
以前のままの俺だったらそんな事を思う事は愚か、向き合う事すら出来ずに過去から逃げ回っていただろう。
「本当に皆さんに感謝しても感謝してもし足りません〜…」
「何だ急に」
俺に向けられた綻んだ唇。柔和な色を宿した目。
煌めいた世界。鮮やかな日々。あたたかな人達。
『上条は必要ない』
過去の自分が、どんなに手を伸ばしても届かなかったものが今この手にあって、もう二度と離したくない、離せない、もっと欲しいと心の奥の自分が訴えて来る。
だけどその尽きない欲と願望は、ふと我に返った時、心に濃い恐怖と不安となって影を落とす。
もしも、今の俺が立つ世界が日々が人達がこの手から擦り抜けて行く日が来るとしたら…。
その喪失感に耐え得るためにはどれ程の強さを手に入れたら良いのだろう。
ー
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速水(プロフ) - ゆめさん» 嬉し過ぎるお言葉ありがとうございます！これからも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2016年6月10日 23時) (
レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ - 速水さんの作品大好きです！特に、ヘタレ選手が好きなのです！これからも更新を楽しみに待ってます！ (2016年6月10日 1時) (レス) id: 44f44b19a6 (このIDを非表示/違反報告)
速水(プロフ) - ? yu ?さん» 本当ですか！？ありがとうございます！嬉しすぎるお言葉です！ (2016年6月9日 15時) (レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
? yu ?(プロフ) - ハムスターのしつけ方 、すごいよかったです！連載化してほしいレベルです(´･_･`)笑 (2016年6月9日 14時) (レス) id: f79162b6f0 (このIDを非表示/違反報告)
速水(プロフ) - ゆらぎさん» 需要ありますか！？良かった！また思い付いたら受難シリーズも更新させて頂きます！ (2016年1月27日 14時) (レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：速水 | 作成日時：2015年10月24日 1時
