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「じゃあ……A?」
そう呼んだ瞬間、宇佐木ちゃんは目に見えてパタリと動きを止めた…かと思えば一瞬のうちにトマトみたいに真っ赤っかにしてオドオドしだす。
「な、何で突然名前ですか?!」
「だって宇佐木ちゃんが呼んだから」
「うっ…」
多分、さっきの名前呼びは思考の延長でしかなく、“俺を呼んだ”というより“名前で呼ぶならの候補達”として呟いたに過ぎないんだと思う。
「ほらほら、Aさんももう一回呼んでみなよ。将洋って」
「む、無理です!無理ですっ!」
「何で?」
「急に名前で呼ぶなんて恐れ多い!」
「恐れ多いって自分の彼氏じゃん」
不可解そうな顔をするの分かるぞ、祐希。
相変わらずこの子は俺を上に見てるんだよなぁ…。
別にそんな大した人間じゃないっての。
ただの同い年の男に過ぎないのに。
「ほら、Aさん。ま・さ・ひ・ろ」
「う…」
「まーさーひーろー」
これは完全に楽しんでいるな、祐希。
ふと、クイと引っ張られる感覚に隣を見ると、相変わらず真っ赤な顔を半泣きに変えた宇佐木ちゃんが俺の袖を指先で引いていた。
助けを求めてじぃっと見つめて来る表情に、ジワリと滲む加虐心と情欲を深呼吸で抑え込む。
「あ!マサさん、今Aさんを可愛いって思ったでしょ!」
「思ったけど何か問題でも?」
「「ぅぇええ!?」」
「祐希、うるさい。宇佐木ちゃんは落ち着こうか」
「だって!マサさんが!」
「お前が振ったんだろ?」
そうだけどさ〜…、と不本意そうに唇を尖らせるけど、俺をからかって遊ぼうなんて100年に早いわ。
その一方の宇佐木ちゃんと言えば、俺の袖は掴んだままで、未だに困惑を隠せないビミョーな顔をしてるから、戻って来いと頭を撫でてやる。
「柳田くん…」
「おかえり、宇佐木ちゃん」
「あ、名字…」
「名前の方が良い?」
「えっと…、心の準備が出来てないので名字でお願い致します…」
深々と下げられた頭に笑いを堪えながら、「分かった」と答えた俺に浮かべられた赤らむ顔ではにかむ顔は、恋を覚えたての子どものように俺の胸を熱くした。
あー、ホントに
「可愛い…」
「俺が?」
「祐希、ハウス」
「だから〜!」
【終】
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速水(プロフ) - ゆめさん» 嬉し過ぎるお言葉ありがとうございます!これからも楽しんでいただけるよう頑張ります! (2016年6月10日 23時) (レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ - 速水さんの作品大好きです!特に、ヘタレ選手が好きなのです!これからも更新を楽しみに待ってます! (2016年6月10日 1時) (レス) id: 44f44b19a6 (このIDを非表示/違反報告)
速水(プロフ) - ? yu ?さん» 本当ですか!?ありがとうございます!嬉しすぎるお言葉です! (2016年6月9日 15時) (レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
? yu ?(プロフ) - ハムスターのしつけ方 、すごいよかったです!連載化してほしいレベルです(´・_・`)笑 (2016年6月9日 14時) (レス) id: f79162b6f0 (このIDを非表示/違反報告)
速水(プロフ) - ゆらぎさん» 需要ありますか!?良かった!また思い付いたら受難シリーズも更新させて頂きます! (2016年1月27日 14時) (レス) id: b15315e85f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:速水 | 作成日時:2015年10月24日 1時