8話 ページ9
『(この人、“亡くなった”って言えたんだな)』
意外だった。
どんな人にでも“死んだ”と言うと思っていたから。
そんな気遣いをするくらいには、上層部の一員である祖母の事を良く思ってくれていたんだと知ったから。
倉庫の外から驚愕の視線を向けられて、メールの内容も同じだったのかとそちらへ歩む。
『…喉に、餅でも詰まらせたんですか?』
否、あの厳格な祖母がそんなことで御臨終はない。
《それ、前の昭夫さん窒息事故?》
残念ながら事故じゃないよ、なんて分かりきった事を言われる。
『冗談です』
__あの強面で、顔の通りの戦闘能力を持つ祖母が死んだ。殺された。
『祖父と両親は無事ですか?』
つまり、それだけ相手も厄介だということ。
両親はともかく、祖父は祖母と一緒にいただろう。なんらかの被害はあったはずだ。
《無事だよ。ご両親もかなり落ち込んでたけど、今は大人しくうちに護衛されてる。昭夫さんはずっと何か唱えてて、護衛が怖がっちゃってさ》
あの人声だけは怖いから、とどこかあっけらかんとする五条先生。
これから面倒くさくなるだろうなぁ、なんて思いながら、とりあえずといった感じで『良かった』が溢れた。
『でも、そっかぁ…。当主としての借り、早速作っちゃったな…』
私は今から如月家当主だ。五条先生と生徒でなく、当主同士の関係になる。
だから、両親と祖父の護衛をいち早くしてくれた五条家には1つ借りができたと考えるのが自然だった。
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作者名:雨が好きな人 | 作成日時:2023年1月11日 18時