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「一時はどうなるかと思ったが、Aのおかげだな」
ご飯を食べ、おしめも替え、すっかり機嫌を直した赤ん坊は、Aの腕の中で、すやすやと寝息を立てる。船員は、だれも起こさぬように静かに疲れた...と小さく言葉を漏らしていた。
『...村のガキの世話は殆ど私がしてたからな多少は慣れてる...でもここまで小さいのは久々だ。どうすんだこの子は...』
「...うちの船長がああだからなぁ...」
癖で出してしまったタバコを赤ん坊を見てしまうベックマン。
ベックマンもだが、シャンクスはそれ以上に赤ん坊にデレデレだった。頬をツンツンと触っては、赤ん坊につられて嬉しそうな顔をしている。
「可愛いな。女の子かぁ〜」
『...で、どうするんだよ』
「責任はとるっていただろう...育てよう。俺達で...」
『お前なぁ...勝手に言うなよ』
「そうだなぁ勝手だ...親に捨てられたのも海賊に拾われたのもこいつは何も悪くねぇ...。普通の家族にはなれないが、それ以上に愛をこめて育てよう。これは運命だ。こいつの髪色が似てるのも、盗んだ宝に紛れてたのも...もうこんなに愛しく感じるのも...」
こんな宝をみすみす手放すなんて海賊がするわけないだろう?と笑顔を向ければ、起きたのか少し目を開けた赤ん坊は、笑顔を返す。
キラキラと太陽の光を反射する大きい瞳が眩しい。きゃっきゃっと嬉しそうに笑う声に自然とこちらも笑ってしまう。
だれも言い返せなかった。一度触れてしまった温もりを簡単には手放せない。
「...それにな。うちにはママがいる。な!Aママ。お前は良いママになるぞぉ」
『一人前になるまでは手伝ってやる...でも私はママにはならねぇ!』
「そんなこと言うなよー。な?」
「ママぁ?」
「っぷ。こいつにも言われてらぁ!...今夜は宴だな!」
赤髪海賊団に小さな小さなクルーが増えた。
その夜は、一段と賑やかな宴があった。赤ん坊が笑えばつられて笑い、泣けばみんなが笑わせようと必死になる。
中でも、赤ん坊は歌がお気に召したらしい。海賊たちが肩を組んで楽し気に歌う姿を見てとびっきりの笑顔をこぼした。時折、大人たちを真似て赤ん坊も楽しそうに声を出している。その声は、まるで天使のようだった。
こいつの名前は“ウタ”だ_____。
ウタ。そう呼ばれた彼女は嬉しそうに返事する。
はじめましてウタ。私たちの家族。今日は君に出会えた特別な日。
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アップルパイ(プロフ) - めちゃくちゃ良い作品だった…(泣)神作品すぎるしゆりあさん天才すぎる…この作品に出会えてよかった…夢主も自分好みすぎて…最高の作品をありがとうございます…!! (2月29日 13時) (レス) @page43 id: c2bcbcc7a7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - ななせさん» コメントありがとうございます!神作だなんて...!めちゃくちゃ嬉しいです!私もななせ様に出会えてうれしいです! (2023年1月14日 19時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
ななせ(プロフ) - なんで今までこんな神作に出会えなかったんだろう (2023年1月13日 22時) (レス) id: fd9fde8179 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - crazyさん» コメントありがとうございます!何度も私のやる気を上げてくださって、最後の最後まで褒めちぎっていただいて...crazy様のことを女神というんです。崇めてます。番外編も作る予定ですので、よろしくお願いします! (2022年10月9日 10時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - 美兎さん» コメントありがとうございます!美兎様、かつらが追い付かないほどの愛のコメントを頂き感謝でいっぱいです!もうきっと出家されてるんですよね。仏のようにこの作品を見守っていただきありがとうございました! (2022年10月9日 9時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆりあ | 作成日時:2022年9月4日 19時