記録 愛の誓い ページ44
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静かな海の上。赤く染まる夕焼けの空。そこにはいつもの日常が、いつもの平和な時が流れている。
愛娘であるウタが天国へ旅立ってから数日の時が経った。
彼女が救った世界は、今日も平和に時が進む。
波の音が風の音が聞こえる。まるで彼女の歌声だ。
Aは、レッドフォース号の見張り台から赤く染まった景色を見る。ウタにせがまれて伸ばした長い髪と、たまにしか着ないからと言った赤いワンピースが、風でなびく。
いつの日だったか、ここで船番をしていたらバカ2人が無理矢理ここに登ってきたのを思い出す。せっかく静かだったのに、一瞬で賑やかになったあの時を。
今はもうそんな騒がしさなどない。静かだ。本当に。
目を閉じて風の音に耳を澄ます。あの騒がしさも嫌いじゃなかった。
ぎしぎしと誰かが縄を使って登ってくる音がする。徐々に近ずくその音は見なくても誰かわかる。
音の主はとうとうココまで登ってきたのだろう音が止まる。そして、後ろからそっと抱きしめられた。この香り、この体温...耳元で囁かれるいつもより低くて熱のこもった声。
シャンクスだ。
「...A。お前を愛してる。これだけ待ったんだ...そろそろ返事を聞かせてくれ」
『...物好きだなてめぇも。もう私は30超えだぞ』
「年齢なんてどうでもいい...Aが欲しい。もう限界だ...奪わせてくれ」
腰に回されたシャンクスの右手は、Aをゆっくりと自身の元へ向けさせる。
その行為に、閉じていた目を開け、抵抗せずにシャンクスの方へ身体ごと振り向いた。
夕焼けをバックにして、視界一杯に綺麗な赤色で染まった景色。シャンクスは珍しく白いスーツを身にまとっていた。
『...綺麗だな...もうとっくにこの赤色に心が奪われてる』
「...ふははっ。すごい口説き文句だ...」
『...口説いてんだよ。ウタと約束したしな...私をお母さんにしてくれるか?』
「ウタには感謝しねぇとな。あぁ...もちろんだ。一生離してやれないが」
Aは、誓ってくれよと言ってシャンクスの右手を自身の顔へ触れさせる。シャンクスはAの手にそっと口付けをする。
『足りない』
「俺もだ」
2人は唇を重ねた。愛を注ぐように、何度も。温かい息が交わった。
「『愛してる』」
そう言葉を交わした海の上。いつもの日常。
でも今日は特別な日だ。私がお母さんになった日。彼と愛を交わした日。
そんな日常が私の宝。
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アップルパイ(プロフ) - めちゃくちゃ良い作品だった…(泣)神作品すぎるしゆりあさん天才すぎる…この作品に出会えてよかった…夢主も自分好みすぎて…最高の作品をありがとうございます…!! (2月29日 13時) (レス) @page43 id: c2bcbcc7a7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - ななせさん» コメントありがとうございます!神作だなんて...!めちゃくちゃ嬉しいです!私もななせ様に出会えてうれしいです! (2023年1月14日 19時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
ななせ(プロフ) - なんで今までこんな神作に出会えなかったんだろう (2023年1月13日 22時) (レス) id: fd9fde8179 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - crazyさん» コメントありがとうございます!何度も私のやる気を上げてくださって、最後の最後まで褒めちぎっていただいて...crazy様のことを女神というんです。崇めてます。番外編も作る予定ですので、よろしくお願いします! (2022年10月9日 10時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - 美兎さん» コメントありがとうございます!美兎様、かつらが追い付かないほどの愛のコメントを頂き感謝でいっぱいです!もうきっと出家されてるんですよね。仏のようにこの作品を見守っていただきありがとうございました! (2022年10月9日 9時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆりあ | 作成日時:2022年9月4日 19時