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7年前___
北の海。ホーリィ島。
島の外れにある小さな村___“
『母さん...私はあなたのようになりたかった...』
母と言ったその白い遺灰を海へ撒く。
あなたを失ってしまった私に...この真っ白ななにもない私に生きる価値はあるのだろうか。
この青い青い海なら私に色を与えてくれるのかな。
涙が止まらなかった。まるで今までの思いがあふれ出すかのように。
泣いちゃいけない。男なら泣いてはいけないのに...。
少女の涙は、ぽつりぽつりと海に落ちる。
泣かないようにと噛んだ唇から、うっすらと血がにじんで鉄の味がする。
弱さを見せてはいけない。隠せ。
私には、まだ守らなければいけないものがある。母が託した兄弟達を村を私は守らなければいけない。私だけが頼りなんだから。
でも、今だけは今だけは...。
誰も見てない今だけ。涙を流すことを許してください。
少女は、声を殺して誰にも気づかれないように静かに泣いた。
「____ベック。少し寄り道してかないか...」
意味のない白紙のページのようなそんな村に、なにかを見つけてしまった変わり者が1人。のちに四皇とまで言われる男が、船から双眼鏡を覗いて言った。
「宝でも見つけたか?」
「あぁ...これは手に入れてぇな」
レンズに映るのは、今にも消えてしまうんじゃないかと思うほど儚い少年。
風が彼の短い白髪を揺らす。汚れのない白い肌。薄い唇には、まるで口紅を塗ったかのような赤い血が滲んでいる。
どんな宝石よりも、彼の涙が綺麗に見える。
どんな女より彼の髪が綺麗に見える。
どんなものより魅力的だ。
一目見ただけなのに、目が離せなかった。なんでこんなにも胸が高鳴るのか、分からない。
なにも知らない彼になんでこんな...。
でも...
絶対に手に入れる___。
そう言った彼の目は、まるで獲物を見つけた野獣だった。
これは運命なのか偶然なのか。
真っ白なページにある真っ白な宝に男は赤い印をつけた。
「これは俺の宝だ」
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アップルパイ(プロフ) - めちゃくちゃ良い作品だった…(泣)神作品すぎるしゆりあさん天才すぎる…この作品に出会えてよかった…夢主も自分好みすぎて…最高の作品をありがとうございます…!! (2月29日 13時) (レス) @page43 id: c2bcbcc7a7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - ななせさん» コメントありがとうございます!神作だなんて...!めちゃくちゃ嬉しいです!私もななせ様に出会えてうれしいです! (2023年1月14日 19時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
ななせ(プロフ) - なんで今までこんな神作に出会えなかったんだろう (2023年1月13日 22時) (レス) id: fd9fde8179 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - crazyさん» コメントありがとうございます!何度も私のやる気を上げてくださって、最後の最後まで褒めちぎっていただいて...crazy様のことを女神というんです。崇めてます。番外編も作る予定ですので、よろしくお願いします! (2022年10月9日 10時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - 美兎さん» コメントありがとうございます!美兎様、かつらが追い付かないほどの愛のコメントを頂き感謝でいっぱいです!もうきっと出家されてるんですよね。仏のようにこの作品を見守っていただきありがとうございました! (2022年10月9日 9時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆりあ | 作成日時:2022年9月4日 19時