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「ウ、ウタが...あんなにシャンクスのことが大好きだったんだぞ...!なのに、船を降りるわけがないっ...!なんかあったんだろ...っ...」
数日ぶりにフーシャ村へ戻ったレッドフォース号をルフィは、嬉しそうに向かい入れた。だが、あれだけうるさい赤髪海賊団は、誰一人として喋らない。元気がない。ルフィが話しかけても誰も小言一つ言ってくれない。ならばいつも旅の話をうるさいくらい自慢してくるウタに聞いてやると、彼女の名を呼ぶが、彼女は姿を表さなかった。
シャンクスは、ウタが船を降りたと言った。
あれだけ赤髪海賊団が大好きだと言っていたウタが。歌手になるためだけで降りるはずがない。シャンクスが嘘をついている。だけど、シャンクスはそれ以上は話さなかった。
それが悔しくて、悲しくて、ルフィの瞳に溜まった大きな雫が溢れた。
___ウタに背負わせるわけにはいかない。悪者になるのは俺らだけで十分だ。いつかきっと、彼女が立派な音楽家になったら迎えに行こう。
あの日。あの夜。
何が起きたのかよくわからなかった。それほど急だった。
エレジア出航日の前日、島民からのリクエストに合わせて歌を披露していたウタ。誰もが、ウタの歌声に魅了されていた。
だけど魅了されていたのは、島民だけではない。ウタの歌声は、エレジアに眠る魔王“トットムジカ”を呼び出した。
燃える上がる火花と、響き渡る悲鳴。
赤髪海賊団が力を尽くすも、戦いは激しさを増す。ウタの体力が限界に達してやっとこの戦いは終わった。
あの音楽が響き渡る綺麗な島の風景はもうない。残ったのは、荒れた土地と、音楽など何もない酷く静かな島だった。
「このことはウタには話すな。全て俺たちのやったことにしろ...ウタを頼む」
優しいウタがこの事実を受け止めるには、あまりにも彼女が可哀そうだった。彼女の大好きな歌が、俺たちが大好きな彼女の歌声が...人を幸せにするこの声が凶器になるはずがない。なってはいけない。
唯一の生き残りであるゴードンにウタを託して、シャンクスは船を出した。
彼女に嫌われてもいい。彼女を守れるのなら。
置いていかないでと泣き叫ぶ彼女の声が聞こえても、俺たちは笑え。涙は見せるな。
じゃないとウタを守れない。
みっともなく涙を流す男たちをAは見ていられなかった。静かに目を閉じて、息を吸う。今度こそ守りぬく。だから泣いてはいけない。
これが私たちの選択なのだから。
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アップルパイ(プロフ) - めちゃくちゃ良い作品だった…(泣)神作品すぎるしゆりあさん天才すぎる…この作品に出会えてよかった…夢主も自分好みすぎて…最高の作品をありがとうございます…!! (2月29日 13時) (レス) @page43 id: c2bcbcc7a7 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - ななせさん» コメントありがとうございます!神作だなんて...!めちゃくちゃ嬉しいです!私もななせ様に出会えてうれしいです! (2023年1月14日 19時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
ななせ(プロフ) - なんで今までこんな神作に出会えなかったんだろう (2023年1月13日 22時) (レス) id: fd9fde8179 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - crazyさん» コメントありがとうございます!何度も私のやる気を上げてくださって、最後の最後まで褒めちぎっていただいて...crazy様のことを女神というんです。崇めてます。番外編も作る予定ですので、よろしくお願いします! (2022年10月9日 10時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
ゆりあ(プロフ) - 美兎さん» コメントありがとうございます!美兎様、かつらが追い付かないほどの愛のコメントを頂き感謝でいっぱいです!もうきっと出家されてるんですよね。仏のようにこの作品を見守っていただきありがとうございました! (2022年10月9日 9時) (レス) id: 029daaf82d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆりあ | 作成日時:2022年9月4日 19時