83松 ページ32
その後、家の周りを全部回ったけど全ての出入口が戸締まりされていて中に入れなかった。
違和感を感じつつ仕方がないから外から声を掛けようとしたけど、それより先に爺さんが勝手に裏口の方に行ってしまった。
ついていけば爺さんは勝手口の前で立ち止まり、そしてバンバンバンッ!!と、扉のあらゆる箇所を強く叩き始めた。いきなりの行動とその音の大きさが想像以上でびっくりした。
そういえばこの爺さん、前はこうやって裏口を開けていたってAが話してたっけ?
…………本当にこんなやり方で開くのだろうか?
―――ガコンッ!!
…………今のは鍵が開いた音じゃねぇよな。
爺さんは慣れているようで、ドアの縁に両手を掛けるとすんなりと扉を持ち上げて壁から外してしまった。開けるってそういう開ける?
こんな事したらAが怒るんじゃないかと心配したけど、家の中から誰かが来る気配もない。普通あんな大きな音がしたらいち早く様子を見に来ると思うけど。もしかして出掛けているのだろうか?
「…Aー?いないn」
「シッ」
爺さんに口を押さえられた。何故に?
爺さんは何も言わないまま家の中に上がり込んで、俺にもそのままついて来いとジェスチャーで伝えてきた。
なんかやってる事が泥棒みたいなんだけど。
でも、静かについて来いと言う割には足音は忍ばせず普通に歩いていて、床が軋む音がハッキリ聞こえる。Aに気付かれたくないのかそうでないのかどっちなんだ?
爺さんの意図がいまいち分からないまま家の奥へ進んでいき、Aの部屋の前まで辿り着いた。中からは物音一つしない。
爺さんはなんの躊躇いも無く部屋の扉を開けると…。
「………A?」
「……………」
部屋の隅に膝を抱えて耳を塞ぎ縮こまっているAを見つけた。相当怯えているのか俺達が部屋に入っても俯いたままで、声を掛けても微動だにしない。
駆け寄って同じ目線になるようにしゃがめば、俯いているAの顔が少しだけ見えた。
意識が切り離されたかのような、何も無い表情。
この顔は、前にも一度だけ見た事があった。
「A、大丈夫?」
「………………」
「A、ねぇって!」
「………あ…、一松…さん…?」
肩を強く揺すればAの目の焦点が合うのが分かった。触れている肩は震えていて、怖がらせてしまった事に対する罪悪感がギシギシとのし掛かってきた。
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渚(プロフ) - 月花さん» 返信が遅れてしまいすみません。1でもコメントしたのですが、Azpainter2というPCソフトを使っています (2020年2月3日 20時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 絵上手いですね。どうやってらんですか? (2020年2月3日 19時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» ご要望にお応え出来ず申し訳ございません…。今後ともよろしくお願いいたします。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: d823623ddd (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - すいません;最新頑張って下さいね。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» えっと、それは短編小説のリクエストでしょうか?それですと申し訳ないのですが、小説のリクエストは受け付けておりませんので…。 (2018年9月4日 18時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2018年1月14日 17時