76松 ページ25
「…辛くないの?」
「そりゃあ辛い時もありましたけど、もう慣れましたから。それにこういう経験って、大人になって社会に出た時、結構役に立つんですよ?ある程度の事なら凹まなくなります」
「……、なんでAがその年で逞しいのかよく分かりました」
「まぁメンタル面はそこそこ鍛えられてると思いますよ」
またいつもの様にAはニコリと笑って、アルバムを部屋に置きに行く為に居間を出ていった。
残された俺は特にする事もなくなり、また一人思索する。
「(―――まだ足りない)」
Aの色素の事は理解した。Aの家族構成についても詳しく教えてもらう事は出来た。
……だけど…。
《あんなおっかねぇ目に会ったんだから無理もねぇのかもしんねぇけど》
前に散歩してた時に出会った婆さんに聞いたこの言葉。
Aから聞いた話の中に、“おっかない目”の関連性が見当たらない。
虐待やいじめにあったって話もしてないし、トラウマになるような体験談もAの話の中には無かった。
あの婆さんの虚言だったのか?
それともあそこまで話しておいて、まだ隠したい事があるのだろうか…。
………俺の勘だと、多分後者だ。
「………なんだってんだよもう…」
靄が残ってスッキリしない。
外からはまだ雨音が聞こえてくる。
―――まだ晴れそうにない。
―――――…
「え、墓参り?」
「はい。なので明日ちょっと帰りが遅くなります」
「まだ御盆、先じゃない?」
「御盆じゃなくて命日なので」
食ってた夕飯の米が気管に入って噎せた。
なんとか口の中の米を飛び散らす事だけは免れたけど、なんで今言う?さっきいくらでも言うタイミングあったよね?
噎せた原因のAはいきなりの事で焦って俺の背中をトントンと叩いている。なんで俺が噎せたのか全く分からないって顔をして。
「大丈夫ですか?」
「ゲッホ…だ、大丈夫だけどさ…、なんでさっきそれ言わなかったの…?」
「いや、さっきは別に言う必要はないかなって思ったので」
「いや言うでしょ普通。流れで言うもんでしょそういうのは」
「だって、言ったところでどうこうなる事でもないですし、余計に空気を重くしたくなかったので」
「………」
一瞬だけAとウチのドライモンスターの面影が重なったような気がした。
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渚(プロフ) - 月花さん» 返信が遅れてしまいすみません。1でもコメントしたのですが、Azpainter2というPCソフトを使っています (2020年2月3日 20時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
月花 - 絵上手いですね。どうやってらんですか? (2020年2月3日 19時) (レス) id: a919e6fca7 (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» ご要望にお応え出来ず申し訳ございません…。今後ともよろしくお願いいたします。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: d823623ddd (このIDを非表示/違反報告)
森田菜々子 - すいません;最新頑張って下さいね。 (2018年9月4日 20時) (レス) id: e772f145ae (このIDを非表示/違反報告)
渚(プロフ) - 森田菜々子さん» えっと、それは短編小説のリクエストでしょうか?それですと申し訳ないのですが、小説のリクエストは受け付けておりませんので…。 (2018年9月4日 18時) (レス) id: b81e412f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:渚 | 作成日時:2018年1月14日 17時