Chapter1.錯綜するエゴ、そのカタチ ページ9
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「わっ!」
「うわあぁっ!?」
びっくりしたあ!驚きのあまりちょっと飛びあがっちゃったよ。
「もー!脅かさないでよ!」隣を振り返りむくれてみせれば、ゆず──ボクがそう呼んでるだけなんだけど──こと
「ごめんごめん、だってもねがぼーっとしてるから」
「だってじゃないの!……もう、ホントにぃ」
「ごめんってば!機嫌なおして〜?」
「おねが〜い!」と上目遣いですり寄ってくるゆず。もう、この子は〜!
「仕方ないなあ〜、許して……あげるっ!」
ボクは近づいて来た頭をぽんぽんと叩き、ゆずが表情を緩めた隙に飛びかかった!
ゆずが「わっ」とよろけかける。それをさりげなく支えながらわしゃわしゃと頭をかきまわすと、自然と両者同じタイミングで声を上げて笑い出した。
「わあー!もう、もねったらぁ!やめてよお、あはっ、あははは!」
「へへっ、うりゃうりゃあ!参ったかー!あははははっ!うわあっ!」
今度こそ体制を崩して、二人一緒にどたんと大きな音を立てて倒れ込む。いったーい!でも、笑いは止まらなかった。
「もー!もねったら、ホントに!」
「ごめっ、ごめんっ!あははっ」
あー、面白い!ついさっき出会ったとは思えないくらい、ボクとゆずはすっかり打ち解けていた。それどころか、こんな風にじゃれあえちゃうくらい!
「あはは、もう……ふう、やっと落ち着いてきた。って、あれっ?他の人たちは?」
不意にゆずがキョロキョロとあたりを見回した。つられてボクも見回す。周りには誰もいない。しんとしている。
「えっ、ちょっと待って!もしかしてボク達、はぐれちゃった!?」
立ち上がりながら言うと、ゆずも立ち上がりながら声を押し殺すようにして言った。
「そ、そんなはず……だって、さっきまで……」
自分でもつい数秒前まで倒れ込むくらいじゃれあっていたなんて思えないくらい、ボク達は血相を変えて慌てた。
どうしよう、と顔を見合わせた瞬間、ボクの後ろにあった扉がギイッと軋んで開いた。
「うわああぁ!?」
「きゃっ!?」
「うわあっ!?……って、ん?君たちは……?」
扉が開いた瞬間、ボクとゆずは勢いで繋いだ手を握り合いながら叫んだ。多分、ゆずはボクの声にびっくりしたんだと思うけど……。そして、扉から出てきたお兄さんもボクの声にびっくりしちゃったみたい。
扉からは一歩踏み出したときの少し乗り出した体勢のまま、せいの高い、顔にやたら怪我をしているらしいお兄さんがボク達の方へ顔を向けていた。
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