・ ページ8
*
「……っ」
謎の威圧感を前に黙る私に、カスミちゃんは「ごめんね」と声を掛けた。
「咲楽ちゃんだって混乱してるんだものね。いつもはお話、ちゃんと聞いてくれるもの。怒っちゃってごめんなさい」
「……うん」
私はもう、頷くのが精一杯だった。本当に、どうしちゃったの?いつものカスミちゃんの様子とは何だか違う気がする。
「夢から覚めるとかなんとかよくわからんけど、とりあえずとっととお家帰すアル。お前、出口まで案内するネ!」
体格のいい男の子が不満そうな顔で言った。ちょっとカタコトで。
「私から帰すことはしないって、言ったでしょ。もう、なんでちゃんと話を聞いてくれないのよ」
カスミちゃんが男の子へ視線を移し、頬を膨らませる。そして、はあ、と空気を吐き出した。なんだか、場の雰囲気は少し変わった気がする。男の子に感謝。
「……とりあえず、パーティーの準備をするから一旦これでお別れよ。みんなは自由に歩いて、見て回っててくれる?なにか不足があれば呼んで。危険物やイメージのしづらいものでなければ渡してあげるから」
カスミちゃんは不満げな顔のまま口を開いた。
「パーティーの準備!?飯作るアルか!?」
ワーも手伝うネ!
と、つい数秒前まで帰せと言っていた男の子がキラキラと目を輝かせた。
「まあね。イメージすればつくり出せちゃうけど、それだと味気ないし」
「ヨッシャ!ワーも」
「それじゃあ、また後でね。明聖くん、みんな」
意気揚々と既に捲られている袖を更にたくし上げるメイセイくん?と呼ばれた彼にはノータッチで、カスミちゃんはなんとふっと姿を消してしまった。メイセイくんは叫んだ。
「アーーーーッ!!女ァ!!待てやゴラァ!!!」
既に遅かった。カスミちゃんはもう階段に立っておらず、忽然と姿を消してしまった。え、どっ、どうしよ!?
「どこに行っちゃったんだろう……私、さっきは黙っちゃったけど、やっぱり帰らないと!」
「うん……とりあえず、カスミちゃんが言うように散策してみようか。そうでなきゃ始まらないし。でも……」
一つ結びくんの隣に立つ美少年くんがみんなの顔を見回す。
「その前にまず、自己紹介をしようか。お互いのことを知ることで、少しでも不安を拭ったり、信頼できるように」
そして、最後に目があった私に同意を求めるように、美少年くんはにっこりと笑みを浮かべた。
「ね、咲楽ちゃん」
12人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ