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「……え?」
かえでちゃんはわたしに反抗するように、むっとした顔をする。でも彼女の青い瞳は、まだ寂しげに揺れていた。
「ちょっと待ってよ、かえでちゃん。それって、どういうこと?」
「ここは夢なんかじゃないの。かえで、パパやママのことなんてっ……知らない!カスミちゃんとずっと一緒にいたの!」
突然叫ぶように言うかえでちゃんに、みんなも何事かとこっちを向く。
「どうしたの、かえでちゃん」
咲楽ねえが心配そうにこっちに来て、かえでちゃんの顔を覗き込む。
「……っ、ごめん、なさい。大きな声出して……」
はっと我に帰ったように俯いて謝るかえでちゃんを、咲楽ねえはそっと抱きしめた。
「ううん、いいの。大丈夫だよ。おねえちゃんがついてるからね」
「うん……ゆんなちゃん、ごめんなさい。まだ、かえでのこと……お友達だと、思ってくれる?」
咲楽ねえから私に視線を移して、震える声でかえでちゃんは問うてきた。もちろん、「うん!」と精一杯頷いた。
「わたし、ずっとかえでちゃんとお友達だよ!」
「……っゆんなちゃん、ありがとう」
咲楽ねえが手を離した瞬間に、かえでちゃんが嬉しそうにわたしの右手を白い両手で包んだ。握られたその両の手から、かえでちゃんの体温が伝わってくる。
「約束してね。ずっと一緒よ」
「うん、ずっと!」
わたしとかえでちゃんが笑い合う様子を、咲楽ねえが嬉しそうに見守っている。ふと周りを見れば、みんなもわたし達を見守ってくれていた。
ん、あれ?
「ゆんなちゃん?」
かえでちゃんがきょとんと見つめてきている。
「あ、ごめんね。なんでもないの」
今、しるべくんと目が合った、けど……。
心の中に″何か″を感じているのに、うまく言葉にまとめられない。そんなわたしには気付かないようで、咲楽ねえがすっと立ち上がった。
「よーし、ゆんちゃん達も笑顔になったところで!ももやま探検隊、再出動しますか!」
「はーい!」
気合いの感じられる咲楽ねえの声に、柚希ちゃんともねちゃんが元気よく返事をする。
「っし、行くかァ。咲楽、しるべも。無理すんなよ。もちろん、小さい子達もな!」
咲楽ねえ、しるべくん、そしてわたし達を順番に見回しながらAくんが言った。咲楽ねえが頷く。
「よーし、しゅっぱーつ!」
そうして、またわたし達は途方もなく歩き出した。
しるべくんに感じた″あれ″は、なんなんだろう。
そのうち、分かるかな。
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