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うーん、大分歩いたと思うんだけど……一向に成果は得られてない。
「柚希ちゃん、大丈夫?」
振り返ると、柚希ちゃんが大分疲れた顔をしてついてきている。ううん、この子だけじゃない。みんな、疲れてるよね……。
柚希ちゃんがはっとした顔で私を見上げる。
「はい、大丈夫です!」
「無理しないで。一回休憩しよっか。ねえ、みんな──」
かくして、私達は一度休憩を取ることにした。玄関ホールの扉の一つ、その先をどんどんと進んできたけど、今まで私達がいた少し古びた洋館の雰囲気とは打って変わって、床も壁も天井も白地にパステルカラーの水玉模様が踊っている、明るい雰囲気の空間だった。天井には細いワイヤーのようなものが伸びていて、色とりどりの傘が吊り下げられている。それを眺めながら歩いていたら、なんだか大きな花がたくさん咲いてるみたいで、綺麗だなあなんて幼稚なことを思ってしまったものだ。
「みんな大丈夫?疲れてたら、一回戻る?」
無限に伸びるパステルカラーの廊下、その壁際にそれぞれが座り込む。私も床に腰を下ろしながら聞くと、みんなは首を横に振った。
「大丈夫!まだまだ歩いてみよ、咲楽ねえ!」
「かえでも大丈夫。ゆんなちゃんやみんながいるからかな、平気な気がするの」
私と向かい合わせに座っているゆんちゃんと、その隣のかえでちゃんが言った。それに続けて柚希ちゃんも口を開いた。
「私も大丈夫です。まだまだ頑張れます!」
「そっかあ。柚希ちゃん、偉いね!」
丁度隣にいたものだから、柚希ちゃんの頭を撫ぜてしまった。「わっ」と柚希ちゃんが驚いた顔をして、慌てて手を離した。
「アッごめん!癖で、つい……!」
「い、いえ!全然っ!むしろ、嬉しいって言うか……あ、いや、その」
咄嗟に言ってしまった、といった様子であわあわしだす柚希ちゃんが愛おしい。嬉しいのかあ、そっかあ。
「そっかそっか、それじゃあ遠慮なく〜!」
「わわ、さ、咲楽さん!」
「へへへ、ゆずってば照れちゃって〜!」
これでもかというくらい頭を撫ぜる。髪が乱れるくらいわしゃわしゃー!とはしてないけど。柚希ちゃんの隣に座る萌音ちゃんがからかうように言った。
「も、もう!もねまで!」
柚希ちゃんはすっかり顔を赤くしてしまっている。愛いやつめ!
「えへへ、やっちゃったあ」
「やっちゃった、じゃないですよ、もー!」
柚希ちゃんは萌音ちゃんから私へと視線を戻し、頬を膨らませた。
「ごめんごめん!それと、敬語じゃなくていいよ?普通に話してくれた方が嬉しいかなあ、なーんて」
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