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すっかりリーダー気取りの彼女が探索開始の合図を出してから、きっと既にかなりの時間が経過した。
「うう、足、痛くなってきた……」
「大丈夫?かえでちゃん」
「……うん。私だけ弱音を吐いてちゃいけないものね」
「む、無理しないでね」
「うん。ありがとう、ゆんなちゃんは優しいね」
後方からそんなやりとりが聞こえてくる。声の主達を確認しなくても、互いに名を呼んでいるしすぐにわかった。百目鬼かえでちゃん。それから、柏元ゆんなちゃん。彼女の従姉妹、だったっけ。
「おーい、ゆんちゃん、かえでちゃん!無理しないでね!辛かったらおねえちゃんにすぐ言ってーー!」
二人の声がわずかに届いていたのか、先頭を歩く彼女──李山咲楽が歩きながら此方を振り返って叫んだ。
その声に、ゆんなちゃん達が返事をする。
「うん!分かった!」
「お姉ちゃんも、無理しないでね!」
「本当だよなァ。咲楽、さっきから気ィ張ってないか?」
「エッそんなことないよ!Aくんってば、もう」
かえでちゃんの言葉を聞いて、咲楽ちゃんの隣を歩く″Aくん″が言う。それに対してからからと笑う咲楽ちゃん──。
咲楽ちゃんはずっと笑ってる。
一目見ただけで、「ああ、この子は心から笑えてるんだな」って分からされてしまうくらい。
───だから
オレとは全然違うんだって、嫌でも自覚しちゃうから。
『咲楽ちゃんに、是非グループの一つに入って欲しいと思って』
あの時の自分の発言を思い返す。何を言ってるんだかって感じだよね。本当は大っ嫌いなくせに。
兎依くんだって、一体なんだって言うんだよ。どうしてさっきから、咲楽ちゃんに引っ付いてるわけ?単に好印象を持ってるって感じじゃない。だってオレはここにいる誰よりも、彼のことを知っている。他のみんなは、彼の名前すら知らないんだから。
″少年A″だなんて、どうしてあんな見え透いた嘘だと分かる偽名を名乗ったのかは分からないけどさ。
「あれ、別れ道?どうしよっか」
不意に、先頭の咲楽ちゃんが足を止めた。それを見てオレは、ここぞとばかりに、出来るだけ自然な動作を装って彼女に近づいた。そしてこっそりと話しかける。
「ねえ、咲楽ちゃん──」
「ん?……エッ、そうなの?分かった!しるべくんがそう言うなら」
彼女はまた、にっこりと笑う。馬鹿だなあ、嘘だよ。『カスミちゃんに道のりのヒントを貰った』なんて、そんなことあるわけないのに。
なんて、内心では彼女のことを見下してばかりな自分の黒さを、ひしひしと思い知らされてるよ。
本当に、大っ嫌い。
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