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「かえでちゃん?」
ゆんちゃんがかえでちゃんに対して首を傾げる。
「……ううん、なんでもないの」
「ホントに?ならいいんだけど……」
かえでちゃんは私の問いかけにもこくりと頷いた。どうしたんだろう?″帰っちゃう″って、なんだか帰ることが悪いみたいな──。
「咲楽ちゃん、いいかな?」
その時、しるべくんがにこやかな微笑を浮かべて近づいてきた。隣にはAくんもいる。
「全員でバラバラに探索するのは危険でしょ?一々カスミちゃんに収集をかけてもらわなきゃ合流出来ないような状態になっちゃうし。かといって全員で行くには人数が多すぎる。
それに……考えてみたんだけど、夢の中だからといって危険がないとも現段階では言い切れないと思うんだ。逆にここが″夢の中″だという不可思議な状況が成り立ってしまっている今、結局のところは何が起きるかわからない」
しるべくんはつらつらと語り、一度言葉を区切った。そしてまた、「そこで」と続ける。
「探索するグループを二つに分けて、何人かは待機しておいてもらうことにしない?夢の主であるカスミちゃんがこの場所を選んで収集をかけたんだし、少なくともこのホール内は安全だと言っていいと思う」
「待機してる人に交代してもらえば、その間に休憩できるしね!いいと思う!何かあった時、ここまで戻って来られるかって点だけは心配だけど……」
そもそも夢の広さが分からないし、現段階で既に私たちの夢の中よりも段違いにカスミちゃんの夢の中は広いということは明らかになってる。何かあった時のために駆けつけられる人がここにいてくれるって分かるのはいいんだけど、問題はここまで戻って来られるか、だ。
しるべくんは表情一つ変えずに、笑顔のまま頷いた。
「うん、確かにそれは最もだね。でも、今はとにかく情報が足りない。動きやすい体制は、今言ったのが一番だと思うんだ」
「単独行動したがる奴も一定数いるとは思うんだけどな。てか、既にいないし」
「あはは……狩くんは自由人!って感じがすごくするもんね……」
やれやれといった様子のAくんに思わず笑ってしまう。狩くんや乱烈くんや、あの綺麗な女の子……織慧ちゃん辺りも、なんだか単独行動を好みそうなイメージがある。
「でも、……わかった。しるべくんの言った通りに、まず探索のグループ分けしよっか」
「ありがとう、咲楽ちゃん。オレが貴方にこのことを伝えたのには理由があるんだ」
「理由?」
おうむ返しに問うと、しるべくんは笑みを深めて言った。
「咲楽ちゃんに、是非グループの一つに入って欲しいと思って」
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