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「ふんふんふ〜ん」

いい天気だなあ、太陽が眩しいけど……日焼け止め、塗ってくれば良かったかなあ。

その日の買い物の帰り、私はいつもとは違う道で帰っていたの。たまにはそういうのもいいかなあって、本当に気分だったんだけどね。

とりあえず買うものは買ったし、……こうやって見るとおやつばっかだけど……あとはこのまま帰るだけ──。

なんて思ってたら、突然ガタンッって、どこからか固いものが衝撃を受けたような音が聞こえたの。

「わっ、なに?」

まあまあ大きな音でね。音の発生源を探してみると、大きなお家の、その倉庫からだって気がついたの。
その後にも数回、ドンドンって音がして、気になって近付いてみた。だってその音、内側から誰かが叩いてるみたいで。
すぐ近くまで行ってみると、それは確信に変わった。

「あ……けて。開けてよ、ママ……!かえで、いい子にするから……もう、許して……」

か細い声で、弱ってるんだなって、すぐに分かった。私、慌てて声をかけたよ。

「っそこにいるの?!」
「……っ誰!?」
「怖がらないで!えっと──」

倉庫には南京錠がかけられてて、外側からでも開けられそうにはなかった。だから私、どうしようって、倉庫の周りを見てみたの。そしたら、倉庫の横の方に小窓があって、そこからまた話しかけた。

「ねえ、大丈夫!?」

とんとんって窓を叩いたら、中にいた女の子は私の方に何度か足をもつれさせながら駆け寄ってきた。きっと、すごく切羽詰まってたんだね。

そしてそれが、かえでちゃんだったの。すごく悲しい顔してた……。

私ね、ちゃんとご両親に言おうと思ったんだよ。だってお母さんに閉じ込められたって言うんだもん。そんなの、酷いしおかしいでしょ。

でも、赤の他人だから聞いてもらえないだろうってのもあったんだけど、かえでちゃんが言うには、お父さんが偉い人みたいで……仮にこのことが世間に知られて、結果的にかえでちゃんがもっと酷い目に遭うんじゃないかって思ったら、抗議にも、警察に行くのにも抵抗ができちゃって。私、酷いよね……。

でも、せめてって思って、その日から毎日、買ってきたパンとかおやつとか、渡すようにしてたの。毎日、一回しかご飯食べてないって言うんだもん。弱るのも当たり前だよね。暗い倉庫の中で、食べ物もなくて、一人で過ごしてて……なんて、辛すぎるよ。

「いつもありがとう」って、かえでちゃんは笑ってくれたけど……

私、ちゃんと助けてあげれば良かったって、何度も思ってた。根本的な解決には、なってなかったもん。

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作者名:褪紅 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年5月17日 7時

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