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「何で付いて来るのよ」
あの子達と別れてからしばらく歩いたけど、未だに背後を歩く足音がする。諦めて離れるものだとばかり思って無視を決め込んでいたのだけれど──と、いい加減痺れを切らし、立ち止まって問うた。
振り返った先にあった顔はこちらを伺うように睨んでいる。全く、そんな顔して付いて来るなんてどういうつもり?
私が問いかけても、彼は少し離れた位置に立ち止まり、ただ私を見ているだけ。
息を吸い込み、
「はあ………何で付いて来るのか、と聞いているのだけれど?」
「別に。た、探索したい方向が同じだっただけだろ……」
彼は戸惑ったように視線を逸らした。ああ、成る程ね。あの睨みはただの虚勢だったわけ。
「そんな見え透いた嘘を吐かないで。私、嘘を吐く人って嫌いなの。不快だわ」
「何だよ、人のこと甘く見やがって……!」
私の言葉に彼はむっとする。勢いからか一歩此方に踏み出した体勢で。
それを呆れた目で見やった。この子のこういう所が好きじゃないのよね。最初から初対面の人や年上にもこういう態度だったし、何より″お前″呼ばわりされる筋合いなんて私には無い。
「甘く見られるような言動ばかりするからでしょう。でもまあ確かに、はっきり言って私から見れば貴方はただの子供って感じね。生意気で自己中心的な性格を隠そうともしない所だとか」
横目で確認すれば、彼は今にも此方に飛び掛かって来そうな程に顔を怒りで歪めていた。思った通り、と鼻で笑う。
「いい加減にしろよ!なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないんだ!」
「ほらね、こういう所よ。こんな分かりやすい挑発にもすぐ乗ってくるんですもの。本当、単純ね。年相応の子供って感じだわ」
「お前……っ」
言い返そうとして言い淀む。そして彼は俯いた。はあ、と再度ため息を吐いて言った。
「それじゃあさようなら。精々気を付け──」
不意に後ろ──私が進んでいた方向──から、子供の声がした。と言っても、そんなに幼い声ではない。
振り返って確認すると、それは人であるという確信に変わった。
「おーい!」と大きな声で此方に呼びかけながら、一人の少年が走って来ている。後ろに立つ彼もそれに気がついたみたい。
「あっ……えっ!?ひ、人!?」
俺たちの他にも人が……?と、彼は驚きのあまりか呟いた。それとほぼ同時に、此方に向かって駆けて来ていた少年が、ぜえぜえと息を切らし私の目の前に立ち止まった。
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