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「なんだよ、面白くねえな。押してみなきゃ分かんないんだったら、とりあえず押そうぜ!」
「虹羽くん!ちょっと待っ……うわあぁっ!?」
止める間も無く、コウくんは手を伸ばしてスイッチを押してしまった。その瞬間、前の方からガコンッと何か外れるような音がして慌てて振り向くと、そうめいくんとキョウくんが立っていたあの床が、ちょうど正方形の形に沿って消え去っていた。
あのスイッチが開閉ボタンだったんだ!そう気がついた時にはもう遅い。それと同時に、二人の姿はぱっくりと開いた不気味な穴の中へと吸い込まれてしまったの!
「わああっ、聡迷ちゃーーーん!!享ちゃーーーん!!」
みらくんが慌てて穴に駆け寄り、中に落ちてしまった二人へ呼びかけたけど返答はなかった。
わたしはかえでちゃんの袖を軽く引っ張って暗に「行こう」と意を伝えると、二人でみらくんみたいに穴のそばへ近づいてみた。
「大分深そうだね」
みらくんが心配そうに言った。彼の言う通り、穴の中にはただ真っ暗な闇が広がっているだけ。どこまでも続いていて、落ち続けてしまいそうな……そんな想像をして、ゾクッとして震えた。
「もーーー!!虹羽ちゃん!!駄目でしょ、勝手なことしちゃーー!!」
「なっ、なんだよ。うるせえな……」
みらくんがコウくんを振り返って言った。対するコウくんは口調こそ崩れていないけど、明らかに″やってしまった″というような焦りが顔に滲んでいた。
「……着地の音はしなかったわ。人が高いところから落ちて潰れる時の音って、実はかなり大きいって聞いたことあるもの。だから大丈夫、きっと死んではいないわよ」
「ふふふ……」とおりえさんが含みのある笑いをした。え、なんでそんなこと知ってるんだろう。ちょっと怖いと思ってしまった。
「心配だけど……どうすることもできないね」
チヅルちゃんが困ったように言った。おりえさんが頷く。
「とりあえず、探索を続けるしかないわね。運が良ければ会えるかもしれないし。それじゃあ、私はこれで失礼するわね」
「はあっ!?」
信じられない、といった顔でコウくんが叫んだ。
「あら、何か文句がおあり?」
「大アリだよ!お前、ちゃんとついてくるって言ってただろ!」
「それはあの人に言われたからでしょう。当の本人がいなくなったのだから、私が貴方達についている必要性はもう無い筈よ」
「は、おいっ!ちょっと待てって!!」
これ以上話をする必要はないと言わんばかりに、とうとうおりえさんは踵を返してしまった。コウくんがおりえさんを追いかける。
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